3月にスタートし全国で9公演が行われた、自身2度目となるアリーナ・ツアーのファイナル。さいたまスーパーアリーナ2デイズの2日目である。直近のリリースとしては、4月10日にiTunesで国内アーティストとしては初となるライヴ・ヴィデオ作品『Force〜Document & Live〜』(DVDやBlu-rayの形態も先行してリリースされている)があったけれど、何より今回のツアーは越智志帆自身が語っていたところの「昨年、デビュー5周年を迎えたんですが、お祝いをしていなかったので、改めてお祝いしましょう」というツアーであった。『GIVE ME TEN!!!!!』とは、両手でハイタッチして欲しい、という意味合いだそうだが、単にキャリアの節目を祝うだけには留まらない、Superflyの5年間を形作ってきたものは何なのか、今後のSuperflyにとって原動力となってゆくものは何なのか、それをひとつずつ確認してゆくという、極めてドラマティックで美しいステージになっていった。
16,000人がバンド・メンバーと共に頭上でクラップを打ち鳴らすデビュー・シングル曲“ハロー・ハロー”では、今の季節とショウのオープニングにぴったりと嵌った歌詞が、越智の伸びやかな歌声で届けられる。アリーナを埋め尽くしたオーディエンスを迎え撃つバンドは、草刈浩司(G.)、八橋義幸(G.)、SUNNY(Key.)、種子田健(Ba.)、小田原豊(Dr.)、オオヒナタハルコ(Cho.)、そして弦一徹ストリングスという、豪華絢爛にして辣腕サウンド・メイカーぞろいの顔ぶれである。“Hi-Five”では早速リボン・キャノンが放たれ、巨大なステージの背景いっぱいを使ったスクリーンには、これまでのSuperfly作品のアートワークも用いられたポップな原色アニメーションも映し出される。アニヴァーサリー企画に相応しい、華やかな演出が次々に繰り出されていった。“マニフェスト”や“恋する瞳は美しい”といった力強いバンド・グルーヴの中に活躍するのは、川上鉄平(Tp.)・五十嵐誠(Tb.)・村瀬和広(Sax.)の3名から成る、ユーモラスな立ち居振る舞いも楽しいその名も「管一発ホーンズ」。このネーミング、最高である。
鮮烈なデビューを果たした頃から既に、Superflyはアリーナ・ロックのスケール感をデフォルトで備えてしまっていたようなアーティストだった。そのパワフルかつソウルフルな歌声の空間掌握力は、このサイズの会場であっても楽々と渡り合ってお釣りがくるほどである。だからこそ今回の公演では、日本人離れしたスケール感のダイナミックな歌はもとより、“凛”や“Secret Garden”といった、日本語の歌がしっかりと聴く者の日常に寄り添ってくれること、それによって、Superflyがポップ・シーンでもトップ・クラスの大きな支持を集めてきたことの理由と価値が、改めて透かし見える気がした。ここで越智は、「つらいことや、苦しいこと、思い悩むこともあって、それを引っ括めて、5年間を褒めてあげられるようなライヴにしたいです」と語る。喜びや幸福感がエネルギーに転嫁されることはもちろんあるけれど、苦しみや痛みに向き合ったときに沸き上がる反骨精神、根源的な生命力に問いかける力もある。彼女にとっては、それこそが見過ごされてはならない財産であり、作品や活動の根幹を成してきたものなのだ。
頭を抱え、険しい表情でふらふらと花道を抜けながら、アリーナ中央のサブ・ステージへと進み出て“アイデンティティの行方”を歌う越智。そして“Deep-sea Fish Orchestra”から“My Best Of My Life”と、重厚なサウンドを搔い潜るようにして、強靭な意志のままの形をした歌声が届けられる。アニヴァーサリー企画だからと言って単純にヒット曲連打とはならず、Superflyの表現の深部を覗き込むことで真価を確認するという時間帯だ。そして越智の姿がステージから見えなくなっている間に、バンドの演奏に合わせてスクリーン上ではいわゆる「音ゲー」の要領でオーディエンスのハンド・クラップを促す指示が。いちいち「Good!」「Excellent!」といった表示が出て楽しい。加熱するオーディエンスの前に、よりアクティヴな装いとなった越智が再び姿を見せて、“タマシイレボリューション”からはアップリフティングなロック・ナンバーが怒濤のごとく畳み掛けられる。“平成ホモサピエンス”に“How Do I Survive?”と、新旧の楽曲が反骨精神という一貫したテーマのもとに披露されてゆくさまが素晴らしい。
アリーナ全域の16,000人が繰り広げる壮観なウェーヴが繰り返し巻き起こされ、その光景に越智が感嘆の声を漏らしながら始まったアンコール。バンド・メンバーがダンサー役を買って出てダンスをレクチャーする “Beep!!”の後、越智は“愛を込めて花束を”について、かつて力を出し切れなかった楽曲が世に広く伝わり、困惑してライヴ演奏を控えてしまったこと、のちに改めてこの曲に向き合い、ライヴでの演奏を再開すると、幸せそうに聴いてくれるオーディエンスに触れて自分がこだわっていたことの小ささに気付かされたことを告白し、ここでも感謝の言葉を投げ掛け、そしてプロデューサーの蔦屋好位置をピアノ演奏に迎えた編成でこの曲を披露した。最後の“Rollin' Days”まで全23曲を完遂すると、『GIVE ME TEN!!!!!』という公演タイトルどおりにバンド・メンバーとハイタッチを繰り返す。万雷の拍手の中、感極まったのか少し言葉を詰まらせながら、彼女は身近なスタッフやイベンターたち対しても、拍手を求めていた。そこにはもちろん、創作活動のパートナーでもある作曲家・多保孝一の名前も挙げられる。ファンをはじめ無数のサポートが有機的に絡み合い、よりしなやかに成長を遂げたSuperflyの、言葉だけではなくパフォーマンスとして見事に感謝の念が表されていたステージであった。何よりも公演タイトルの『GIVE ME TEN!!!!!』は、10周年に向けた意気込みとしても読み取れるのだが、どうだろうか。(小池宏和)
01. ハロー・ハロー
02. Hi-Five
03. マニフェスト
04. 恋する瞳は美しい
05. 1969
06. 凛
07. Secret Garden
08. Nitty Gritty
09. アイデンティティの行方
10. Deep-sea Fish Orchestra
11. My Best Of My Life
12. タマシイレボリューション
13. 平成ホモサピエンス
14. How Do I Survive?
15. 嘘とロマンス
16. Get High!!~アドレナリン~
17. Alright!!
18. Force
19. 輝く月のように
20. スタンディングオベーション
encore
01. Beep!!
02. 愛を込めて花束を
03. Rollin' Days