MUSIC TAGS vol.1(クリープハイプ、SAKANAMON、N'夙川BOYS、本棚のモヨコ) @ SHIBUYA-AX

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Dragon Ash/サカナクション/THE BAWDIES/サンボマスターなど、錚々たるアーティストが所属するビクターエンタテインメントの音楽制作セクション「GMpV」(「Getting Better」「MOB SQUAD」「plusGROUND」「Victor」の4レーベルで構成)が主催するライブ・イベントの第一弾、その名も『MUSIC TAGS vol.1』。「アーティストが作り出す音楽をリスナーの人生に付箋(=MUSIC TAGS)を張り付けるように記憶して欲しい」「アーティスト及びリスナーと“タッグ”を組む」といったメッセージと共に開催された今回の『MUSIC TAGS vol.1』には、クリープハイプ/SAKANAMON/N'夙川BOYSといったGMpVきっての新鋭陣が集結!ということで、早くも開演前からむせ返るような熱気と期待感が満場のAXに渦巻いている。そして、暗転した会場に鳴り響く「みなさんこんにちは! THE BAWDIESのROYです!」という陰アナの声。ひとしきり注意事項の説明の後、「それでは、最高にロックンロールな1日を!」という軽快なコールが、フロアの温度をさらに上げていく。

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■本棚のモヨコ(オープニング・アクト)
01.僕らのメモリーズ
02.夢子とアンダーグラウンド
03.夢見る子さん
04.魔法の条件
「Recommended Special Act」として真っ先に登場したのは、北海道発の男女5人組「ふわふわ系魔法バンド」こと本棚のモヨコ。“僕らのメモリーズ”で時にユニゾンで、時に絶妙のハーモニーを聴かせる森脩平(Vo・G)とゆちよ(Key・Vo)のWヴォーカル。スウィートで開放感にあふれたサウンドと共に、ねじれた毒気を混ぜ込んだ言葉を響かせながら、会場丸ごとポップのワンダーランドへと導いていくような音世界。「初めましての方が多いと思うんですけど頑張ります!」(森) 「先週、初ミニアルバム『夢の続きをもう一度』を発売しました! 今日、発売して初めての東京でのライブになります。たくさんのみなさんの前でできてすごく嬉しいです」(ゆちよ)と初々しい挨拶を挟みつつ、『夢の続きを~』からの“夢見る子さん”ではグリム童話が自然発火するようなマジカルな音像越しに不穏な熱量を覗かせてもみせる。ラストの軽快なシャッフル・ビートのナンバー“魔法の条件”まで4曲と持ち時間こそ短かったものの、その非凡なきらめきがこの日のオープニングを何より色鮮やかに飾っていた。

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■N'夙川BOYS
01.プラネットマジック
02.Freedom
03.アダムとイブがそっと
04.Candy People
05.物語はちと?不安定
いよいよここから本番!ということで、サカナクション・山口一郎からのメッセージ映像、N'夙川BOYS担当ディレクターのインタビュー映像に続いて、リンダdada/マーヤLOVE/シンノスケBoysの3人がオン・ステージ! 「いけるか『MUSIC TAGS』!」というマーヤのシャウト一発でオーディエンスの情熱をMAXに燃え上がらせ、リンダ→Dr、マーヤ&シンノスケ→G編成の“プラネットマジック”でいきなりフロア激震の狂騒ダンス空間を生み出してみせる。「Wギター、ベースなし」の無防備なくらいにスカスカな編成を、ロックンロールの新しい黄金フォーマットに変えてしまった奇跡の3人=N'夙川BOYS。“Freedom”での「立ってドラム叩きながら軽快にジャンプ」なのか「ジャンプのついでにドラム叩く」なのかわからないけど、とにかく観る者の胸躍らせるリンダのドラム。“アダムとイブがそっと”で飛び出したリンダの強烈なドラムをバックに、マーヤとシンノスケがキメた見事なギター背面弾き。「リンダ!」「マーヤ!」と呼びかけ合い、「ビクターさん、ありがとう!」(マーヤ) 「お世話になってます!」(リンダ)と「主催者」に感謝を伝えつつ、“Candy People”でフロアの柵に高々と立ち上がってみせるリンダ&マーヤの姿は神々しいくらいのスター感にあふれていた。マーヤ→Drの“物語はちと?不安定”では、ギター持ったままクラウドサーフをキメるシンノスケに続いて、「飛び込むぜ! でもケガすんな! 頼んだぜロックンロール!」と呼びかけてフロアにダイブするマーヤ。共闘関係というか共犯関係というか、バンドとオーディエンスがともにヤバい場所を作り上げていこうとする熱い磁場がそこにはあった。

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■SAKANAMON
01.マジックアワー
02.SAKANAMON THE WORLD
03.空想イマイマシー
04.かくれんぼ
05.シグナルマン
06.ミュージックプランクトン
07.妄想DRIVER
続いては、「ビクター期待の新人、SAKANAMONです!」と森野光晴(B)が自分で言っていた通り、デビュー・タイミングで言えば3組の中ではいちばん新参の3ピース:SAKANAMON。だが、シーケンスと同期するというより、むしろデッドヒートを繰り広げるような疾走感に満ちた冒頭の“マジックアワー”といい、“SAKANAMON THE WORLD”のソリッドなサウンド越しに描き出す高揚感といい、「新人」という言葉を遠く置き去りにするような存在感と訴求力でフロアを力強く揺さぶっていく。天を貫くようなパワフルなヴォーカリゼーションをダイナミックに突き上げて聴く者の身体と心を震わせてみせる藤森元生(Vo・G)が、時に♪藤森元生はちと不安定~ とさっきのN'夙川BOYSのアクトを受けての替え歌で観客を沸かせたり、一方の森野は「ビクターはライヴ重視っていうか、こんなイベントやっちゃうくらいライヴ大好きなレーベルだと思ってるんで。そんなイベントに出さしてもらって嬉しいです!」というメッセージを口にしつつも「あと、偉い人が喜ぶんで、そんなビクターに大きな拍手を!」と悪戯っぽい表情を見せたり……といった場面の1つ1つが、ステージとフロアの距離をぐいぐいと近づけていく。4月17日にリリースされたばかりのシングル曲“シグナルマン”の爆走ビートから立ち昇る《君が青なら 僕は進むよ》のサビの凛とした多幸感。狂騒感とポップ感がせめぎ合いながらロックの果てへ突っ走る“ミュージックプランクトン”。ラストの“妄想DRIVER”まで、その大器ぶりを存分に見せつけていった。

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■クリープハイプ
01.イノチミジカシコイセヨオトメ
02.手と手
03.愛の標識
04.蜂蜜と風呂場
05.HE IS MINE
06.身も蓋もない水槽
07.社会の窓
EC.憂、燦々
最後を飾るのはクリープハイプ! ドラム前で円陣を組んだ4人、“イノチミジカシコイセヨオトメ”でいきなりAXを沸点越えの熱気で満たしてみせる。ピンサロ嬢のセンチメントを至上のロックンロールに結晶させた“イノチミジカシ~”での尾崎世界観(Vo・G)のハイトーン絶唱は五感をびりびり震わせてくるし、“手と手”で響き渡った長谷川カオナシ(B)&小泉拓(Dr)のビートは骨太なうねりをもってAX丸ごと揺さぶってくる。そして、《死ぬまで一生愛されてると思ってたよ》と歌う“愛の標識”の尾崎の超速テンポ感をさらに煽るような速弾きフレーズを奏でてみせる小川幸慈(G)……担当ディレクター氏も、演奏前のコメント映像で「クリープハイプのディレクターの役割は、尾崎世界観の頭の中にあるものを整理して形にすること」と話していたが、尾崎の脳内に広がる唯一無二のロックンロール・ワールドを具現化するバンドの表現力が、デビュー以降格段に増していることが、この日のアクトからもリアルに伝わってくる。「久しぶりだから緊張するなあと思いながら、久しぶりの曲をやります」という尾崎の言葉に続いて披露した“蜂蜜と風呂場”の4つ打ちビートが、フロアを高らかなクラップで包んでいく。

「あの……盛り上がるといいなと思ってるんですけど、盛り上がってますか?」と呼びかける尾崎に、割れんばかりの歓声で応えるオーディエンス。さらに「ちゃんとね、盛り上げてほしい理由があって。もうすぐ契約更新があるから!(笑)」とぶっちゃけ話で爆笑を誘った後、「それでは、ささやかですが、盛り上がりやすい曲をお届けします!」と流れ込んだのは“HE IS MINE”。尾崎の「今度会ったら……」に続けて、満場の「セックスしよう!」の大合唱! ラストの“社会の窓”で《もっと普通の恋を歌えばいいのに》のところを《CMソングを歌えばいいのに》にアレンジしていたのは完全にアンコールへの伏線だろう。アンコールで再び登場した4人、「すごく大事な曲をやります。いろんな人と一緒に作って、大事な曲になりました」という尾崎の言葉と共に演奏したのは、資生堂「アネッサ」CMソングにもなっている“憂、燦々”……なのだが、イントロで小川のギターから突拍子もない音が鳴って演奏ストップ。「帰ろっかな……」と一瞬しょげてみせた尾崎だが、「Tシャツとか買わなくていいから、アネッサを買ってくれ!」と威勢よく言い放って拍手喝采を巻き起こし、再び“憂、燦々”へ。ひときわ鮮烈なハイトーン・ヴォーカルが、この祝祭空間をどこまでも目映く照らし出すように高らかに響いていた。来るべき『vol.2』『vol.3』への期待が早くも募って仕方がない、最高の一夜だった。(高橋智樹)
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