NO MORE FUCKIN' NUKES @ SHIBUYA-AX

NO MORE FUCKIN' NUKES @ SHIBUYA-AX - NAMBA69 pic by WATARU UMEDANAMBA69 pic by WATARU UMEDA
難波章浩と実行委員会が中心になって今回初めて開催されたイヴェントが、『NO MORE FUCKIN’ NUKES 2013』だ。2012年に坂本龍一のオーガナイズによって立ち上げられ、今年3月にも第2回目が開催された『NO NUKES』の意志を継承するイヴェントであり、その辺りのいきさつは『NO MORE FUCKIN’ NUKES 2013』公式ホームページ上(こちら→http://www.nomorefuckinnukes.com)、難波章浩と坂本龍一によるラジオでの対談を文章化した項目においても明かされている。来場できなかった人々のためにUstream配信を行い、参議院選挙を一週間後に控えたこのタイミングで今後に繋がる具体的なアクションについての呼び掛けも行われた1日の模様をレポートしたい。

NO MORE FUCKIN' NUKES @ SHIBUYA-AX - 松田“CHABE”岳二 pic by TEPPEI松田“CHABE”岳二 pic by TEPPEI
この日は途中、激しい雨にも見舞われ、一般来場者やSHIBUYA-AXの屋外テント・ブースでそれぞれに呼び掛けを行っていたNGOやボランティア団体、企業などの参加者は苦労する一幕もあったが、混乱もなくイヴェントの成功に向けて協力的な姿勢を貫いていた。ステージでは開演前にチャーベ君こと松田“CHABE”岳二のDJがオーディエンスを迎え、開演時間の15時にはNAMBA69が登場である。今春、新編成でスタートした、燃えるように赤い髪の難波章浩率いる3ピース・バンド。いの一番にライヴ・アクトとしての出番を済ませ、その後は司会進行役として出演者を次々に紹介しながらエールを送っていた難波。3.11後の彼が生み出して来た歯切れの良い、強烈な反骨精神と触れる者を鼓舞するメッセージを宿した楽曲と同様に、彼の1日の活躍は熱い意志と、どこか余裕さえ感じさせる覚悟の大きさを受け止めさせ、実に頼もしいものだった。「未来は優しく待っていてくれると思ったら大間違いだぜ。未来は自分の手で掴まなきゃ!」と最後に“未来へ~It's your future~”を叩き付けると、ステージに駆けつけたもんじゅ君とハグを交わす。

NO MORE FUCKIN' NUKES @ SHIBUYA-AX - サンボマスター pic by TEPPEIサンボマスター pic by TEPPEI
「『京都大作戦』で一緒にモツ煮込みを食いながら、難波さんは、政治的なことよりも福島のことを歌ってくれ、って言ってくれたんだ。俺のふるさとのためだけじゃねえ、あんたのふるさとのために歌わせてくれ!」と“I love you & I need you ふくしま”を歌ったのは、サンボマスター・山口隆。最初は近藤洋一のアコギ伴奏を伴って優しく、そこからサンボによる目一杯の爆音で展開する熱演だ。歌とアジテーションとソウルが過剰なレヴェルで等価に結びつき合ったパフォーマンスを繰り広げると、ここで難波がステージに招き入れるのは「南相馬 みんな共和国」の近藤能之。彼のスピーチでは、子供(と親)たちが安心して遊べる場所、ということで、南相馬市内の高見公演に水遊びができる「じゃぶじゃぶ池」を作るプロジェクトが紹介された。安全のための具体的な数値基準はもとより、「安心」という現地人々の心のケアを念頭に置いた取り組みが丁寧に伝えられていた。

NO MORE FUCKIN' NUKES @ SHIBUYA-AX - 恒正彦 pic by WATARU UMEDA恒正彦 pic by WATARU UMEDA
恒岡章(Hi-STANDARD, CUBISMO GRAFICO FIVE)、村上正人(HELLBENT)、HIKO(GAUZE)という、パンク/ハードコア/サイコビリーの伝説的ドラマーたちが、圧巻のトリプル・ドラム・セッションを繰り広げるというユニットの恒正彦。触れる者に掴み掛かるように響き渡るトライバル・ビートから人力トランスまでを行き来し、言葉はなくともビートこそが生命の息遣いと言わんばかりの、人々を衝き動かして止まないパフォーマンスがほぼノンストップで届けられた。そして、毎週金曜日の首相官邸前デモを行っている首都圏反原発連合の一員、ミサオ・レッドウルフは、政治参加意識の向上や、地道な抗議行動といったごく一般的な視点から、行動を呼び掛けていた。

NO MORE FUCKIN' NUKES @ SHIBUYA-AX - BRAHMAN pic by TEPPEIBRAHMAN pic by TEPPEI
「あれから3度目の夏。2度目のNO NUKESライヴ。1度きりの人生、後悔したくねえから、『NO MORE FUCKIN' NUKES』、BRAHMANはじめます!」と放たれるTOSHI-LOWの口上に、当然の如く沸騰するオーディエンスである。もちろん轟音は轟音なのだが、軽やかと言ってしまってもいいくらい、澱みなく放たれてしまう今のBRAHMANの突き抜けたサウンドとアンサンブルはどうだろう。フロアに飛び込んで前線のオーディエンスにリフトされたTOSHI-LOWは、“霹靂”を歌う前に今回も長く素晴らしいMCを聞かせてくれたのだが、その一部を抜粋したい。「あの震災は、たくさんのものを奪いました。俺の友達や先輩の家族を奪って、国土の3%を奪って、家族の団らんを奪って……昨日、『KESEN ROCK FESTIVAL '13』に出て、あんなド田舎だから、バンド仲間とかボランティア仲間と呑む、そんなことを楽しみにしていて。でも、このイヴェントに出なきゃならなくて。あの日は、俺たちから打ち上げまで奪っちまった」

NO MORE FUCKIN' NUKES @ SHIBUYA-AX - ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン pic by WATARU UMEDAソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン pic by WATARU UMEDA
この後には、緑の党の推薦で参院選・比例代表に立候補し、当日も渋谷駅前での「選挙ライブ」で話題を集めて会場に駆けつけた三宅洋平と、東京選挙区に立候補した山本太郎が立て続けにスピーチを行い、続いてはソウル・フラワー・ユニオンの別動プロジェクト、ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザンが登場である。バンバンバザールの黒川修がウッドベースで参加するという編成で、街頭で戦う者を優しく抱擁する中川敬名義リリースの“世界はお前を待っている”から、「東北・沖縄・世界で戦っている人たちに捧げたいと思います!」と披露された新曲“踊れ! 踊らされる前に”。阪神・淡路大震災を契機に生まれた名曲“満月の夕”も、TOSHI-LOWがコーラス参加する形で演奏された。エレクトリック編成時よりもぐっとジェントルな演奏を聴かせておきながら「ダイブとかモッシュとか、せんのやな」と中川は冗談めかしていたが、3.11以降だけの話ではない、長く戦い続けることの意味を体で熟知したバンドによる、じわりと胸に染み入るようなステージであった。

NO MORE FUCKIN' NUKES @ SHIBUYA-AX - SLANG pic by TEPPEISLANG pic by TEPPEI
極太のトラックに乗せた「再稼働反対!」のコールを交えつつ、パブリック・エナミー“ドント・ビリーヴ・ザ・ハイプ”を引用したラップを披露したのはNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのDELIだ。「騙す側は次から次へと出てくる。騙されるな。音楽だけじゃ世の中は変わらないけど、音楽は秘めた想いを残してくれる」と迫力の声でメッセージを投げ掛けていた。その直後にも生々しい街頭コールがSEとして鳴り響き、SLANGの4人がステージに立つ。凄まじい音圧で迫るハードコア・チューンの数々を繰り出しながら、KOは自身が継続的に行っている被災地への物資支援活動=NBC作戦について「レトルト食品とか欲しがってる人いるのかって、もう500回ぐらい訊かれてきたんですけど、主に仮設住宅に入っているお年寄りに送っていて、仮設住宅が最後のひとつになるまで、続けたいと思ってますんで……正直、90を越えたお年寄りとか、本当に仮設住宅を出て行けるのかなって思うときもあるんですよ」と切に語っていた。

NO MORE FUCKIN' NUKES @ SHIBUYA-AX - KEN YOKOYAMA pic by WATARU UMEDAKEN YOKOYAMA pic by WATARU UMEDA
そして、環境エネルギー政策研究所所長・飯田哲也が「政治の世界では議席の51%を獲得しなければならないけれども、人々の意見が全体の20%を越えたら、世論はそちらのベクトルへと向きを変えます」といった言葉を伝えたのち、いよいよライヴ・アクトは大詰めのKEN YOKOYAMAへ。“You And I, Against The World”で日の丸の旗をマントのように羽織った横山健は、「俺たちはさ、電力会社で働いている人が嫌いで、原発やめようって言ってるわけじゃないじゃん。ただ、危なっかしいからやめようって言ってるだけじゃん。本当にクリーンなら、俺も喜んで使おうって言うよ。でも、あぶねえよ、やっぱ。こういうこと言うと、頭おかしいとか、経済のこと考えてないとか言われるけど、そんなの関係ねえよ。思ったこと言えばいいんだよ。俺は俺で、日本のこと考えてる!」と告げ、「自分の国の発電方法ぐらいさ、自分たちで考えてえよな。ここは、俺たちの国だわ」と今度は“This Is Your Land”に繋いでみせる。興奮が最高潮に達するクライマックスでは、“Let The Beat Carry On”の激流のサウンドの中に飛び入りしたTOSHI-LOWがステージ上のマイクを勝手にフロアに投げ込み、そして“Believer”は冒頭からオーディエンスに歌が委ねられる、といった眩い光景が生み出されるのだった。難波章浩と実行委員会が中心になって開催された『NO MORE FUCKIN' NUKES 2013』、それは日頃から脱原発や復興支援に尽力する、それも政治・経済や学問の識者層ばかりではなく市井の人々の声に多く触れることが出来た、とても濃密な体験の1日であった。なお、今回のイヴェントの電力はすべて太陽光発電とバイオマス燃料発電によって賄われており、全編に渡ってとんでもなく刺激的なサウンドが届けられていた。(小池宏和)
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