ハイム @ 渋谷CLUB QUATTRO

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前日のサヴェージズ、そしてこの日のハイムと、2013年に素晴らしいデビュー・アルバムをリリースしたガールズ・バンドの来日が続いている。そしてサヴェージズもハイムも、昨年のフジ・ロックでの初来日を経て、今回が初の単独来日ツアーということになる。エスティ、ダニエル、アラナのハイム三姉妹によって結成されたハイムはカリフォルニア出身、昨年リリースのデビュー・アルバム『デイズ・アー・ゴーン』が全英初登場1位を記録するなど、大ブレイクを果たしたニューカマー。この日の渋谷クラブクアトロももちろんソールドアウトだ。

定刻を10分ほどすぎたところで三姉妹とバックバンドが登場し、満員のフロアから大歓声が上がる。バンド編成は次女のダニエルがギター、長女のエスティがベース、末っ子のアラナがキーボードとパーカッションをメインで担当し、ヴォーカルはダニエルを中心に三人で歌い繋いだりコーラスを入れたりする分担制度、というのがハイムの基本フォーメーションだ。1曲目の“Falling”ではこの基本フォーメーションに加えてエスティがパーカッションにも参戦し、のっけから激しくビートの効いたアレンジが炸裂する。

ハイム @ 渋谷CLUB QUATTRO
2曲目の“If I Could Change Your Mind”もオーディエンスの手拍子も加わったパーカッシヴなエレクトロ風ナンバーなのだが、後半はダニエルがギター・ソロを弾きまくる展開になだれ込み、一気にハード・ロック・ナンバーになってしまう。『デイズ・アー・ゴーン』は、今どきの80sの影響の見えるインディ・ポップ・アルバムと形容しても差し支えないアルバムなわけだが、ハイムはライヴになると途端にロック色を強めてくるのが面白い。「わたしたちが家のリビングでジャムってるとこんな感じなんだ」と言って始まったフリートウッド・マックのカヴァー“Oh Well”などは、ほとんどレッド・ツェッペリンみたいなことになっていて笑ってしまった。

ハイム @ 渋谷CLUB QUATTRO
「もしもソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ』の姉妹が自殺せずに成長したらこんな感じたったかも」とハイムを評したのは『NME』誌だったが、彼女たちのステージを観るとほんとそうだよなあ……と納得してしまう。キャンディなポップ・メロディとど王道なメタル・リフ、ガーリィなさらさらロング・ヘアやホットパンツといかつい革ジャンが普通に同居した彼女たちの感性は、まさにソフィア・コッポラがサブカルチャー的視点で描いたカリフォルニア・ガールのそれだと思う。続く“Honey & I”はド迫力の“Oh Well”から一転して2010年代インディの洗練を極めたポップ・チューンとして鳴るし、ファンクとエレクトロがミックスされた“My Song 5”のユニークな折衷感覚も、彼女たちにしてみれば当たり前のマナーなのだろう。

ハイム @ 渋谷CLUB QUATTRO
ちなみに三姉妹はそれぞれに個性が違って、長女のエスティはクリスティーナ・アギレラばりのドスの効いたソウル声の持ち主で、彼女がAメロを歌う“Days Are Gone”は中盤のいいフックになっていた。ユニセックスなダニエル、赤いリップもセクシー系なエスティ、そしてホットパンツでロリータ系のアラナとファッションや佇まいの三者三様で、こういうヴィジュアルのキャッチーさ、ポップさもまたハイムの魅力だ。曲間にはメンバーの名前を叫ぶファンも多々いて、ハイムがそのキャラクターも含めて良い意味でアイコンになっているのを感じる。演奏はけっして上手くはないのに、なぜかバンド・アンサンブルはかっちり噛み合うという、姉妹ならではの阿吽の呼吸も観ていて楽しい(三姉妹に必死に合わせていくバックバンドもえらい)。あと、これは凄く単純なことなのだけど、ダニエルは歌いながら「ハッ!」とか「アッ!」とか掛け声を入れることが多いのだが、この「ハッ!」とか「アッ!」がそれこそ餅つきの合いの手のように、三人のタイミングを合わせる合図になっているのかもしれないと思った。

ハイム @ 渋谷CLUB QUATTRO
“Don’t Save Me”以降は『デイズ・アー・ゴーン』からのキラー・チューン、シンガロング・アンセムが連打される楽しすぎる展開だ。つくづく、デビュー・アルバムに3曲も4曲もフロア瞬間沸騰のキラー・チューンがあるって凄いことだと思う。なかでも“Forever”は満場の喝采を持って受け入れられ、ハンドクラップを巻き起こし、圧巻のうちに本編が終わる。アンコールの“The Wire”はダニエル、エスティ、アラナがリード・ヴォーカルをスイッチングして歌い継ぐたびに歓声が上がる。ラストの“Let Me Go”では3人がそれぞれにドラムスを和太鼓みたいに叩きまくり、圧巻のフィナーレを演出する。アンコールまで含めて約1時間10分というショートセットだったけれど、この短時間の中に「ぜんぶ入ってる」簡潔さみたいな感覚は、音楽性もパフォーマンスの内容も全く異なるけれど、昨日のサヴェージズにも通じるものを感じた。(粉川しの)

Falling
If I Could Change Your Mind
Oh Well
Honey & I
Days Are Gone
My Song 5
Don't Save Me
Running If You Call My Name
Forever
(encore)
The Wire
Let Me Go
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