キュウソネコカミ @ 渋谷CLUB QUATTRO

キュウソネコカミ @ 渋谷CLUB QUATTRO - All pics by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)All pics by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
片時も熱が冷めることなく、2時間半を越えるヴォリュームのワンマン。最後には「ネタ全部出し切った〜!」と完全燃焼の思いが零れるステージであった。1/10の名古屋池下UPSET、1/19の大阪・梅田クラブクアトロ、そして今回の東京・渋谷クラブクアトロと繰り広げられて来た、キュウソネコカミの『DMCC -REAL ONEMAN TOUR- ドリームズカミカミ』。「憧れの会場」のチケットを即完させるという盛り上がりぶりで、そのくせ妬み嫉み混じりにメジャーでの成功を全力で揶揄し、現在のロック文化にカウンターを放ち、ビビりながらも身体を張ってDQNに噛み付いては、押し付けられた世代のレッテルに思いを馳せる。泣いて笑えるパフォーマンスのコンセプトが、2時間半の間一切ブレない。キュウソの魅力と反骨精神を、余すことなく伝えてしまっていた。

キュウソネコカミ @ 渋谷CLUB QUATTRO
「クラブクアトロ、かなり床が揺れるらしいな! いきなり揺らしてみてもいいですかぁ!?」。サカナクション“アイデンティティ”のオープニングSEに乗って姿を見せるなり、さっそく荒ぶった声を上げるヤマサキ セイヤ(Vo./G.)が、“ネコ踊る”の強烈な祭典グルーヴへとオーディエンスを巻き込んで間の手を誘う。10月にリリースされたファースト・ミニ・アルバム『ウィーアーインディーズバンド!!』からは、PVも秀逸だった“ファントムヴァイブレーション”を繰り出して《スマホはもはや俺の臓器》と、インターネット依存の生活を赤裸々に描き出してゆくのだった。真紅の照明に染まりながら披露された“TSUTSUNUKE BOYS”の直後には、「サビの前に、なんて言った?(ヨコタ シンノスケ・Key./Vo.)」「送信ボタン押す前に、内容確認ちゃんとせえよ、みたいな(ヤマサキ)」と語ったり、インターネット・カルチャーの負の面にガンガン切り込んでゆく姿勢にも余念がない。

キュウソネコカミ @ 渋谷CLUB QUATTRO
ヤマサキとヨコタのヴォーカル・リレーによるメッセージはひたすら刺激的だが、ソリッドなロック・アンサンブルからうねるようなディスコ・グルーヴまでをがっちりと支えるソゴウ タイスケ(Dr.)&カワクボ タクロウ(Ba.)のボトム、そしてインパクトのあるギター・フレーズを次々に繰り出すオカザワ カズマ(G.)の活躍にも事あるごとに目を奪われる。そしてあるときにはユーモラスに、ときには情感たっぷりに繰り出されるヨコタのオリエンタルなシンセ・フレーズ。前のめりな勢いをひしひしと受け止めさせながら、こうした膨大な音の情報量とスキルに支えられているのが、キュウソのライヴの熱狂なのだ。爆発的にファンキーな“FABYOOOOO!!!!”が理論の抑圧を撥ね除け、巻き舌気味に絡み付いて来るヤマサキの歌声は、ステージ上のパフォーマンスにおいて誰よりも強い発言権を手にしていた。

キュウソネコカミ @ 渋谷CLUB QUATTRO
家族に期待を持たせるだけ持たせてバンド活動とバイトに勤しむ、そんなバンドマンの悲哀を歌い込んだ“キャベツ”では「テレビとかメジャーとか決まらへんの?」と声を掛けられるというブルースを挟み込み、続けざまに披露されたのは、「ニュー・シングルです! 恋愛ソング書きました! これで世界とります!」という大言壮語と共に披露される新曲だ。決してニュー・シングルではないのだが、こうしたMCを挟むのもキュウソならではだ。クリアな音色の美しいリフレインが折り重なって、失恋のエモーションがじわりと滲む、キュウソらしいラヴ・ソング。余計困ったことに、マジで良い曲だったのだ。シングル出せば良いのに。その後には“DQNなりたい、40代で死にたい”の賑々しいコール&レスポンスに大塚美容形成外科のCMソングを混ぜ込み、「俺のしがらみ」が幾つも書き込まれた段ボール箱を取り出してのパフォーマンスでは「お前らの選んだ都知事が、俺たちをオリンピックの開会式に出させてくれる!」と野心を燃やすなど、基本的には切実なのにどうしてもトリッキーになってしまう熱演の数々で、笑いの輪を広げてゆく。

キュウソネコカミ @ 渋谷CLUB QUATTRO
ヤマサキは前日に一人でサカナクションのライヴを観たらしく、今回のオープニングSEにしてもそうだが、もろに刺激を受けて帰って来たらしい。「凄すぎて、逆に参考になるものがない」と語ってはいたが、「(“サブカル女子”の)あのサビ前のいくぞーっ、てのは?(ヨコタ)」「はい、一郎さんの影響です(ヤマサキ)」と、ところどころで影響が見られる。そして本編終盤は、“ウィーアーインディーズバンド!!”からのアッパーな楽曲連打。じっくり間を取りながら歌おうとするヤマサキの歌を、オーディエンスのシンガロングがフライング気味に奪ってソゴウのビートがつられてしまう、という盛り上がりゆえのハプニングなどもありながら、“良いDJ”ではオカザワのギターによるスクラッチが興奮の火に油を注ぎ、“空芯菜”から“キュウソネコカミ”といったキラー・チューン群によって「東名阪、ありがとうございましたっ!!」と、既に20曲を越えたところでフィニッシュを迎えた。

キュウソネコカミ @ 渋谷CLUB QUATTRO
さて、カバー曲を披露するアンコールの一発目は、名古屋でB’z“ultra soul”、大阪ではポルノグラフィティ“アポロ”だったという前フリから、鮮烈なギター・イントロで嬌声を浴びて、なんとBUMP OF CHICKENの“天体観測”だ。オカザワも熱唱を披露するなど、愛情とリスペクト精神の注ぎ込まれた名演であった。“就活就活”では唱歌“ふるさと”やタウンワークCMソングのフレーズといった遊び心がまだまだ盛り込まれ、ダブルアンコールに入ってからの新曲“KMDT25”(キマジメドーテイトウェンティファイブと読むようだ)は「日本古来のサークル」つまり盆踊りビートで踊るという、夏フェスでの活躍も期待させるナンバー。最終的にはやっぱりフロアは揉みくちゃになっていたし、最後の最後が小田和正“たしかなこと”のSEによるシンガロングで締め括られるという光景はシュールだったけれども、間違いなくお腹いっぱいの熱狂が、そこにはあった。2/12代官山UNITにおけるgroup_inouとの対バン企画のチケットも発売がスタートしているので、ぜひチェックを。(小池宏和)
キュウソネコカミ @ 渋谷CLUB QUATTRO


セットリスト
01 ネコ踊る
02 ファントムヴァイブレーション
03 テレキャスばっか
04 TSUTSUNUKE BOYS
05 ファッションミュージック
06 FABYOOOOO!!!!
07 キャベツ
08 (新曲)
09 DQNなりたい、40代で死にたい
10 YUTORI is good
11 ゲーマーズハイ
12 困った
13 音楽やめたい
14 たまにいるタラシくん
15 シャチクズ
16 サブカル女子
17 ウィーアーインディーズバンド!!
18 良いDJ
19 JP
20 空芯菜
21 キュウソネコカミ

encore
01 天体観測
02 就活就活

encore-2
01 KMDT25
02 お願いシェンロン
03 オリジナリティー
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