パリ同時テロ事件に居合わせた、イーグルス・オブ・デス・メタルのファンが綴った文章が話題に

パリ同時テロ事件に居合わせた、イーグルス・オブ・デス・メタルのファンが綴った文章が話題に

昨年11月にフランスのパリで起きたイーグルス・オブ・デス・メタルのライヴでの銃乱射テロ事件をめぐって、イーグルス・オブ・デス・メタルのジェシー・ヒューズがイスラム教徒全体を敵視した発言や、セキュリティーや会場側の人間がテロ犯人に通じていたなどといった発言を繰り返し物議をかもしているが、事件の会場となったバタクラン劇場に居合わせたバンドのファンがそんなジェシーに失望したという文章をフェイスブックで公開し、話題を呼んでいる。

事件後、ジェシーはアメリカでの銃規制反対、トランプ支持、イスラムやアラブ敵視発言などを事件と絡めて発言してきているが、保守系政治サイトのタキズ・マガジンで持論を繰り広げ、さらに物議をかもしている。これに対して、事件の現場にいたイスマエル・エル・イラキは次のようにジェシーに呼びかけている。

「あなたの音楽やあなたのライヴは大好き(めちゃ楽しいしライヴがごっついし)だったのに、あなた自身が恐怖の拡散者に成り果てるとは夢にも思っていませんでした。あなたもフォックス・ニュースやトランプと同じ類だったとは。あなたのことはいつも一匹狼で反骨者だと思えていたのに、そうではなかったことがわたしたちに今わかりました。わたしたち(つまり、反骨者で一匹狼のロック・ファン)はずっとあなたのことを愛して、弁護してきました。それはあなたが愛すべき愚か者のいかれぽんちだったからです。三バカ大将やアニメーターのテックス・アヴェリーの『うそつき狼』のように。でも、今やあなたはその愚かさがとても危険なものだと証明してしまいました。

あなたのコメントは忌々しい傷口をまたしても開いてしまいました。あなたは会場のセキュリティー・スタッフも事件に関わっていて、会場にいたアラブ系の客には事件の忠告をしていたといっています。あなたのライヴが始まる前に誰かが会場の観客の写真を撮っていますが、そこに写っているようにぼくはアラブ系でみてくれもまるでそういう人物です。縮れっ毛の髭を生やして肌も浅黒いです。ただ、ぼくはロックンロールを糧にして、それを呼吸しています。ぼくの奥さんの愛を除けば、ロックンロールはぼくにとって人生で最も大切なものです。あの11月の生温かった夜、ぼくはバタクランに詰めかけた客のひとりでした」

「ぼくはロックンロールを糧にして呼吸していると先にいいましたが、それと同時にぼくはこれ以上にないくらいイスラム教徒的な容姿をしています。けれども、イスラム教徒の巨大凶悪組織はぼくに忠告することを怠ったようです。さらにジャミラや、あの夜同じように会場で銃撃されて命を落としたほかの大勢のアラブ人に声をかけるのも忘れたようです。あの夜、撃たれた友達のモロッコ人のアミンにも声をかけ忘れたようです」

「好きにいろいろ詮索してみればいいでしょうが、あなたは決してあなたが発見することに満足することはないはずです。というのは、あなたの偏狭で枠にはまったイスラム教徒やアラブ人というイメージにかなった人などいないことがわかるはずだからです(そもそもイスラム教徒とアラブ人との区別さえあなたにはついていないのも明らかです)。あの夜、ぼくが手を貸した人たちは誰もぼくがアラブ系だったことを気にしていなかったですし、ぼくも彼らの人種を気にしてなんかいませんでしたし、どんな信心を持っているかも関係ありませんでした。あの夜、ぼくたちはみんな同じ赤い血を流したんだよ」

「なによりも悲しいのは、あのむごたらしい惨劇の中からなんとか生きて脱出できた大多数の人たちは、あるイスラム教徒の男に恩を負っているということをあなたはまるで理解していないということです。彼の名前はディディといって、ぼくたちのほとんどが脱出した正面の左側のドアを開けてくれたのが彼でした。あなたもぼくも、あるいはぼくが出会った誰もやろうとしなかったことを彼はやってのけたのです。

このアラブ人のイスラム教徒がなにをしたのかわかりますか? 彼は正面左の扉を開けて、それによってぼくたち大勢が脱出して、外に出ていったん安全になったにもかかわらず、彼はまた中に戻ったのです。彼は踵を返して中に戻ってさらにたくさんの人たちを助け出したのです。彼は階上の扉も開けて、さらに多くの人たちを救い出しました。この人物はあなたとは大違いです。ぼくともですが」

「あなたはイスラム教が問題の元凶だといいます。ぼくはこういいます。『あなたたちのような偏見を持つ人たち全員とその全員で信じているお伽話が元凶なのです。あなたたちの人種差別と、他人が複雑な存在だと(文化とか人種とかでは説明がつかないくらい複雑だと)認識することを拒絶するあなたたちの態度が問題なのです』」

「ロックンロールっていうのは愛なんだぜ。あんた自分を見てみろよ、憎悪の伝道者になってるじゃないか。あなたがステージに立っている時にぼくたちみんなが愛した、あの人物になってください。愛を広めてください。髭や肌の色や宗教だとか民族衣装だとかを見透かすような本当の愛を、コンサートの観客だけでなくて、願わくはひとつの国を、世界そのものを集わせる愛を広めてください。あなたが広めているものがどれだけ間違っているか、あなたがやっていることがどれだけ間違っているかわかってもらえたら嬉しいです。『まだ道を変える余地はある』とレッド・ツェッペリンもかつて歌ったのだから」

公開された全文とライヴ当日の写真はこちらから。
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