【完全レポ】横浜アリーナのTHE YELLOW MONKEYはやっぱり特別過ぎだ! 万感の8月3日を振り返る
2016.08.04 21:10
ザ・イエロー・モンキーが、2016年8月3日(水)に横浜アリーナで全国ツアーの追加公演「THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016
–YOKOHAMA SPECIAL-」を開催した。RO69では、この模様をロングレポートでお届けする。
--------------------------
見逃したら一生後悔するレベルのライブというものが、人生にはいくつかあると思うけれど、ザ・イエロー・モンキーの今回の横浜アリーナでのライブも、そのひとつだ。なぜ今回の再始動ツアーに「YOKOHAMA SPECIAL」が必要だったのか。その答えを見せつけられたようなステージだった。一連の再始動ツアーのライブは、特別な祝祭ムードの高揚感を、素晴らしいロックのエンターテインメントとして昇華したものだった。そうした祝福の宴を通過した後に、いや、たぶん、祝祭の裏で虎視眈々と、ザ・イエロー・モンキーは、ロックバンドとしての純然たるアイデンティティを私たちに突きつけるための準備を進めていたのだ。ロックスターの曇りなき輝きを見せつけたライブツアーと並行して、こんなにソリッドでヘヴィで凄まじいライブを用意してくれていたとは。
1曲目はなんと“RAINBOW MAN”。イントロが鳴り、ため息のようなどよめきが大歓声に変わる。菊地英昭(エマ)が抱えるダブルネックギターから、12弦特有の揺らぎのあるギターリフが響き渡り、初っ端から異次元へと連れて行かれるよう。メンバー全員、黒を基調とした衣装で合わせていたのも、この日はバンドサウンドで勝負するという自信の表れのような気がした。後に吉井和哉が「ここ横浜アリーナは、『FIX THE SICKS』ツアーで最初にやって、そのアリーナツアーでバンドとしては春を迎えました」とMCで回想したように、バンドにとっても横アリは思い出深い場所であり、その当時のライブの1曲目も、この“RAINBOW MAN”だった。そう、今回の「YOKOHAMA SPECIAL」は、解散前の彼らのキャリアの中でも、バンドとしてひとつのピークであった『SICKS』に、この横浜の地でもう一度命を吹き込むような、そんなライブだったとも言える。
再始動ツアーのライブを各地でこなしていく中で、こちらの予想をはるかに上回る速度でバンドとしての成熟度を増していったザ・イエロー・モンキーが、本当のスタートはこれからだといわんばかりのサウンドで畳み掛けてくる。メンバー全員のパフォーマンス、表情、どれをとっても迷いがなく、すべてに自信がみなぎっていて、もう、かつてのイエモンが戻ってきた、なんて言葉では全然足りない感じ。生まれ変わって、それこそ蛹からかえった蝶が、より大きく美しい羽を伸び伸びと広げているような、圧倒的なバンドサウンドを響かせているのだ。きっと、そんな「本当のスタート」を全国の音楽ファンにも届けたくて、この日のライブはスカパーで生中継をしたんじゃないかなとも思う。お茶の間で悶絶していたファンも多かったはず。
今年5月からのツアーで、ライブをさらなるクライマックスへと導くスイッチとなっている楽曲が、なんと言っても新曲の“ALRIGHT”だ。ドラムとベースが作り上げるグルーヴの厚さが回を追うごとに増す。特に、廣瀬洋一(ヒーセ)が奏でるベースラインは出色の気持ちよさで、静かに燃えるエマのギターがさらに楽曲を妖しく彩る。中盤でこの曲が放たれた後は、もうオーディエンスの熱を抑えることはできない。オーディエンスだけじゃない。続く次曲の演奏中に、吉井はステージから客席へと向かうスロープを降り、遮る柵を自ら乱暴にどけると、アリーナの通路を会場後方へと駆け出していった。もちろん観客も押し寄せる。警備員さんには緊張が走る。幸せな熱狂は、テレビでも伝わっただろうか。
終盤、「2013年に、メンバーにそれぞれメールして、『また一緒にバンドをやってください』って送ったら、ふたつ返事で『やろう』と言ってくれて。それで、みなさんにもお願いしたい。また一緒にバラ色の日々を探しに行ってくれませんか」と、“バラ色の日々”を披露。会場中のシンガロング。吉井の「ビューティフル!」の声。アンコールで披露された“LOVE LOVE SHOW”の後に叫んだ、本気の「愛してます!」。ステージと客席(と、お茶の間)の気持ちの昂ぶりにこれっぽっちのズレもない。相思相愛の奇跡がそこにあった。イエモンの本当の凄さを、私はこれまでまったくわかっていなかったんじゃないかと思うほど、この日の堂々たるパフォーマンスのひとつひとつが、まだ頭から離れないでいる。11月からのホールツアーでは、きっとこの夜と同じく、あるいはもっともっと、ザ・イエロー・モンキーのバンドサウンドの魅力を味わわせてくれることだろう。楽しみでしかない。(杉浦美恵)