モリッシー伝記映画、旧友のミュージシャンが「実に不可解な企画」「悪意に満ちている」

モリッシー伝記映画、旧友のミュージシャンが「実に不可解な企画」「悪意に満ちている」

7月2日にエジンバラ国際映画祭でプレミア上映され、予告編も公開されているモリッシーの伝記映画『England Is Mine』だが、モリッシーの10代の頃の友人が「悪意に満ちた、むしろモリッシーの才能を貶める内容だ」と批判している。

モリッシーがジョニー・マーザ・スミスを結成するまでの生き様を描いた本作は、イギリスでは8月4日に劇場公開を予定している。


NME」によると、今回批判の声を上げたのはモリッシーの子どもの頃からの友人で、初期のザ・スミスのライブではステージ上で踊っていたというジェームス・メイカーだ。

ミュージシャンであるジェームスは、自身でもレイモンドやRPLAというバンドを立ち上げ、作家や映像作家としても活動している。

『England Is Mine』の予告編動画が公開されたのを受け、ジェームスは自身のFacebookページでこの作品を「これは伝記映画などではなくて、歴史を参考にしたフィクションでしかない」、「悪意に満ちていて、モリッシーのそもそもの才能を貶めようとするものでしかない」と一蹴している。

モリッシー伝記映画、旧友のミュージシャンが「実に不可解な企画」「悪意に満ちている」

「『England Is Mine』の予告編によると、モリッシーは自閉症的な、長髪のくせっ毛の引きこもりで、善意に満ちた友人(だが、スミスが成功している間、まともにモリッシーと意思疎通を図ろうともしなかった人物《つまり、ジョニー・マー》)に無理矢理背中を押されて歌手になったことになっている。

さらにひどいのは、この映画で製作サイドはモリッシーにグリーンのダッフル・コートを着せて、私たち誰もが知っている、モリッシーの機知に富んだユーモアをまったく披露させていないことだ。これは伝記映画などではなく、歴史を参考にしたフィクションに過ぎない。

モリッシーの思春期における特にこの時期については、これまでにも徹底的にさまざまな記事などで叙述されてきただけに、今更なぜこんなフィクションを試みるか、実に不可解な企画だとしか思えない。

私は当時のモリッシーを知っていたし、(モリッシーが10代を過ごした)キングス・ロード384番地の家のこともよく知っていた。モリッシーの母親も、映画の中の自宅のカーテンのセンスがまるで自分のものとは違うと訴訟を起こすべきだとさえ思う。

いずれにしても、事実は、この主人公はモリッシーではないということだ。モリッシーが歌手になれるくらいだから、ほかの誰にでも歌手になれるはずだというこの映画の前提は、悪意に満ちていて、モリッシーのアーティストとしてのそもそもの才能を貶めようとするものでしかない。

当時、そしてスミスが結成されるまで、モリッシーはごく一握りではあったけれども、親友に囲まれていて、これはモリッシーの回想記『Autobiography』やぼくの回想記『AutoFellatio』にも詳細に記されていることだ。しかし、映画の中に私は登場しないし、映画の中には現実に存在しなかったキャラクターの数々が製作サイドによって作り出されている。

私自身は映画の中に登場しなくてほっとしていているし、この映画は人生の大きな回転扉を通ろうとしている主人公をくせっ毛の長髪で、人の意見なしにはそれができない人物として描いているくらいだから、私などは自分の部屋の外壁の窓の脇に掲げてあった『球技禁止』の看板以上の冒険を奇跡的に成し遂げた人物としてのみ描かれただろう(『球技禁止』は道路での児童の遊戯を禁止する看板で、児童はこれを無視するのが当たり前なので、その当たり前なことを奇跡的にやり遂げた、取るに足らない人物として自分は描かれただろうという意味)」

なお、このFacebookへの投稿は現在削除されており、全文は米「ステレオガム」の記事に掲載されている。

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