なぜQOTSAは新作『ヴィランズ』で、こんなにも熱く外向きに開いたのか?

なぜQOTSAは新作『ヴィランズ』で、こんなにも熱く外向きに開いたのか?

クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの最新アルバム『ヴィランズ』が、おおいに好評を博している。O2アリーナでのコンサートが完売しているイギリスでは、チャート初登場1位を獲得。本国アメリカでは総合3位だったものの、ストリーミングを除外した実売数では圧倒的な強さでトップという結果を叩き出した。ここ日本においても、フジロックで見せた素晴らしいライブの評判を受け、かつてない盛り上がりっぷりだ。

これはやはり、単に『ヴィランズ』が良いアルバムというだけでなく、この作品において彼らが抱いた、より多くの人々へ積極的にアピールしようという姿勢のもたらした結果なのだと思う。『ヴィランズ』収録曲には耳にした者の心を惹きつけるフックが満載だし、ジョシュ・オムがクールに華麗なダンスをキメてみせる“The Way You Used To Do”のビデオクリップにも、その意思は象徴されている(現時点ではApple Music限定公開。メイキング映像がYouTubeで公開中)。

Queens of the Stone Age - The Way You Used To Do

マドンナレディー・ガガの映像作品も手がけてきたジョナス・アカーランドが監督した、このビデオの撮影中、ジョシュは古傷の膝を痛めてしまったという。フジでは杖をついている姿が見られ、直後に出演予定だったフェスをキャンセルしたことからも、かなりの重症だったことは想像がつく。以前のジョシュ・オムは、どちらかといえば、大衆の顔色をうかがうよりも自らの音楽道の追求に邁進するタイプに見えたが、ここにきて突然、それほどまで熱く外向きの姿勢を示すようになったのは何故だろうか。

おそらくは、彼が昨年イギー・ポップのレコードをプロデュースした経験と、その作業にかかっていたためジョシュ自身は現場に不在だったが、もしかしたらドラマーとして参加していてもおかしくなかったイーグルス・オブ・デス・メタルのパリ公演でテロ事件が発生し、大勢の人が亡くなった事件が関係しているのではないかと思う。これまで通り自分たちのやるべきことを貫き通すのは大前提で、さらに「やれることはなんでもやってやろう」というチャレンジ精神を偉大な先達イギーから受け取り、過酷な現実世界を意識させられる中で表現者としての覚悟を定めていったのではないだろうか。そしてその心情は、偶然(?)隣のスタジオで新作をレコーディングしていた盟友フー・ファイターズとも自然にシンクロし、加速していったのに違いない。(鈴木喜之)
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