NIN『アッド・ヴァイオレンス』が証明した、ロックの攻撃性こそ最強にコマーシャルだということ

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Nine Inch Nails “LESS THAN”

ナイン・インチ・ネイルズによる最新3部作EPの第2弾『アッド・ヴァイオレンス』がフィジカルリリースされる。『ツイン・ピークス The Return』第8話への出演も大きな話題となったNINだが、そもそも『アッド・ヴァイオレンス』は今年7月、NIN久々のライブ復帰とほぼ同じタイミングで配信リリースされ、また『ツイン・ピークス The Return』第8話の本国放送はその約一月前のことだった。既に「神回」として語り草となっている第8話は、ドラマファンも巻き込んで、現行NINの刺激的な活動を広くアピールすることに成功したわけだ。

The Nine Inch Nails in Twin Peaks

トレント・レズナーが映像作品の音楽面に関わる仕事と言えば、『ツイン・ピークス』監督でもあるデヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』をはじめ、2010年代になると盟友アッティカス・ロスと共に『ソーシャル・ネットワーク』、『ゴーン・ガール』、『パトリオット・デイ』など名作映画のサントラを次々に手掛けてきた。

ただ、今回の『ツイン・ピークス』出演に関しては、これまでの映像関連仕事とは大きく意味が異なっている。トレントの先鋭的で高度な音楽性が評価され起用されているというよりも、不穏で挑発的でプライベートなNINの表現が、ありのままに求められていたのである。

劇中で披露されていたのは3部作EP第1弾『ノット・ザ・アクチュアル・イベンツ』収録の“She’s Gone Away”だが、同作について書いた記事でも触れているように、最新のNINはささくれ立つような、凶暴なまでの感情の形をロックの大切な一面として改めて捉え直してきた。先ごろリリースされたサントラ『Twin Peaks (Music from the Limited Event Series)』には、最新ドラマシリーズの劇中歌がズラリと収められているのだけれど(今後のドラマの展開を楽しみにしている方はネタバレにご注意)、その中でも“She’s Gone Away”の取り返しのつかない絶望感は異彩を放っている。

7月に新作EP『アッド・ヴァイオレンス』に初めて触れたときには、初期NINを彷彿とさせるようなニューウェーヴ/インダストリアルのいびつなまま届けられるサウンドに、新鮮な魅力を感じた。現在発売中の『rockin’on』2017年10月号インタビューによれば、『アッド・ヴァイオレンス』はリリースの1週間前までミックスを行っていたということで、じっくり丹念なプロダクションよりも、より衝動的で即時性の高い作風を追求していたことになる。

ネガティヴな感情の渦と真っ向から格闘した『ノット・ザ・アクチュアル・イベンツ』は圧巻だったが、『アッド・ヴァイオレンス』はタイトルどおり、より対外的な攻撃性がストレートに表れた一枚だ。そのソリッドな響きこそが、キャッチーな魅力と化してしまう。ロックの「キャッチー」とはこういうことである。最終トラックの“The Background World”は、今どきアナログテープをカット&ペーストして不穏なループを構築するような11分強の長尺曲であり、マッドサイエンティストのごとき手捌きに意識が呑み込まれる。

ロックの最も直接的で危うい一面こそが、実は最もセクシーでありコマーシャルなのだということを、トレントはどこかで気づかされたのだ。件の『ツイン・ピークス』神回は、まさにそのことを裏付けるエピソードとなった。NINはきっと、この世間の好感触をバネに新しいアルバムを作り上げるだろう。3部作EPの完結と併せて楽しみだ。(小池宏和)

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