近年のフェスと比べると、様々な点において手作り感たっぷりだった記憶がある。まだまだ日本においてフェス自体が黎明期だったとはいえ、「AIR JAM」は、1998年、2000年と観ることができたが、本当にライブハウスの延長線上にあると感じたフェスだった。詳細を記せば、「え、そんなにカオスだったの!?」と思われるかもしれない。しかし、『Live at AIR JAM 2000』を観てほしい。そういったフェスで1日を過ごし、しかも18組の熱いバンド/アーティストで盛り上がり続け、ヘトヘトになっていてもおかしくないキッズが……みんな笑っているだろう? そういうフェスだったのだ。
ライブハウスに出ているバンドと、ライブハウスに通っているキッズが、いっせいにでっかい場所に集まってブチあげるお祭り(実際にライブ終了後に花火もブチあがったけれど)。そう、もちろんハイスタが作らなければ成り立たなかったフェスではあるけれど、あの場にいたひとりひとりに「自分たちのフェス」という実感があったのだと思う。改めて観てみると、ハイスタの3人も含めて、驚くほど若い人しかいない! そういった現場ならではの、特別な高揚感があった。DVDにも、アリーナからスタンドまでびっしり埋まったオーディエンスが、何度も映し出されている。私自身も1階スタンドにいたのだが、あんなにスタンドの熱狂度が高かったフェスやライブは、他に記憶がない。
男の子も女の子も知らない人同士も肩を組んで輪になったこと、メンバーの弾いたフレーズに瞬時に反応して大合唱したこと、ステージ袖にいたバンドマンもアリーナにいたスーツ姿の人も踊っていたこと、アドリブ!?なのか、様々なフレーズがライブハウスの如く挟み込まれたこと、誰もがTシャツやタオルを回して千葉マリンスタジアムが真っ白になったこと――あらゆる壁が見えなくなるほど、あの日、僕らは自由だった。自由のもとに、ひとつになった。
“We're All Grown Up”ではあるけれど、きっとあの日を体験した元キッズは、大人になっても、オトナになってはいない。その誇りを改めて噛み締められるDVDだ。そして、あの日を礎にはじまったこともたくさんある。キッズは、そのあたりも注目しながら観てみてほしい。ハイスタのライブについては、活動休止前という時期ならではの緊張感もにじみ出てはいるが、この3人こそがHi-STANDARDだと思える無敵感が、何よりも全編を貫いている。その無敵感を踏まえて、『The Gift』を聴くと、さらに感慨深いはずだ。(高橋美穂)