N.E.R.D. & Rihanna - Lemon
この11月、リアーナを迎えたニュー・シングル“Lemon”を発表し、ロングビーチの「ComplexCon」で行われたニュー・アルバム『No_One Ever Really Dies』のリスニング・パーティと、本格的再始動に向けて盛り上がるN.E.R.D.(グループ名とシリアスなテーマにかけたニュー・アルバムのタイトルが熱い)。でも、若い人の中には、ファレルは知っているけどN.E.R.D.って何? という方も多いかも知れない。そこで今回は、N.E.R.D.の軌跡をざっと振り返ってみたい。
故郷バージニアで、少年時代から友人だったファレル・ウィリアムスとチャド・ヒューゴは、ハイスクールでシェイ・ヘイリーと出会い、同郷・同世代のティンバランドらと共に音楽活動を行っていた。ファレルとチャドは名プロデューサーのテディ・ライリーに見出される形でプロの制作の世界に入り、90年代前半からレックスン・エフェクトやSWVといったグループのヒット作に携わっている。ファレル&チャド=ザ・ネプチューンズの名を広く知らしめたのは、1998年のNoreaga(後のN.O.R.E.)のシングル“Superthug”だろう。この曲は「Billboard」のラップ・チャートで1位に輝いた。
N.E.R.D. - Rock Star
ファンキーでありながらも、ソリッドなビートとギターサウンドをフィーチャーするザ・ネプチューンズのサウンドは高い記名性を誇り、ケリスのデビュー作『カレイドスコープ』ではアルバム単位のインパクトをもたらした。ファレルとチャド、そしてシェイは、晴れてグループとして表舞台に立つべく、N.E.R.D.を名乗って初のアルバム『イン・サーチ・オブ…』を2001年に発表する。この作品は当初プログラミングのトラックを用いた作風だったが、ケリスの2ndアルバム『ワンダーランド』に参加したミネアポリスのバンド=スパイモブを起用する形でリメイクされ、現在流通しているものはこのバンドサウンドのバージョンとなっている。
N.E.R.D. - She Wants To Move
21世紀に入り、N.E.R.D.としての活動が行われる一方で、ザ・ネプチューンズも第一線のプロデューサー・チームとして多忙な時期を迎えていた。ブリトニー・スピアーズやジャスティン・ティンバーレイクといったトップスターの作品を手がけ、またジェイ・Zやコモンら大物ラッパーの信頼も獲得しながら、2003年にはザ・ネプチューンズとして多くのゲストを招いた現状唯一のアルバム『クローンズ』を、次いで2004年にN.E.R.D.の2ndアルバム『フライ・オア・ダイ』を発表する。狂騒の中で、彼らのロックかつストレンジなプロダクションは、むしろキャッチーに研ぎ澄まされていった。この頃の彼らの活躍は質・量ともに凄まじいものがあった。
N.E.R.D. - Hypnotize U
ところがこの後、レーベルのゴタゴタなどもあってグループの活動は停滞し、ファレルが初のソロ・アルバム『In My Mind』を発表するなど、メンバー個々の活動が目立ってゆく。N.E.R.D.が所有レーベルのStar Trakごとインタースコープ・レコードに籍を移し、心機一転のニュー・アルバム『シーイング・サウンズ』を放つのは2008年を待つことになるが、さらに伸び伸びと自由度を増し、豊穣になった作風がリスナーから好意的に迎えられた。続く2010年のアルバム『ナッシング』も音楽性の拡大路線を推し進め、ダフト・パンクとのコラボ曲“Hypnotize U”や、ネリー・ファータドとの“Hot-n-Fun”といった成果を残すことになる。
N.E.R.D. - Squeeze Me (from The Spongebob Movie: Sponge Out Of Water)
ファレルはソロとして『G I R L』の大成功を収めたのち、N.E.R.D.の新たな活動について匂わせていたが、映画『スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!』(2015)のサントラに数曲を提供するステップを踏んで、久々のニュー・アルバムの季節に突入しようとしている。誰よりも自由な表現でトレンドを生み出してきた彼らが、今度は何を見せてくれるのか。楽しみだ。(小池宏和)