米津玄師がウェブラジオ『F / T RADIO』で明かした新曲の真相

米津玄師が、ニューシングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』のリリースを記念して、特別ウェブラジオ番組「米津玄師 F / T RADIO」を公開した。米津がこのような形でウェブラジオを配信したのは『米津玄師 ████████と、Lemon。』以来2度目だ。


番組は前回同様インタビュー形式。『Lemon』大ヒット後に米津が考えていたことや、そこから『Flamingo / TEENAGE RIOT』に至るまでの経緯、今回の収録曲である“Flamingo”、“TEENAGE RIOT”、“ごめんね”制作時のエピソードなどが語られた。『Flamingo / TEENAGE RIOT』を聴いた時、「どうして『Lemon』のあとにこのようなシングルが?」と意外に思ったという人は、ぜひこの番組を聴いてみてほしい。米津玄師の変遷を縦軸で辿ることにより、腑に落ちる部分もきっとあることだろう。

番組序盤で特に重きを置いて語られていたのは、他者との出会いについてだった。例えば、子どもの頃から憧れを持っていたBUMP OF CHICKENとの対面。宮崎駿との会話を通じて得た「もっともっと生きるに値する人生が待っているんだろうなあ」という実感。辻本知彦・菅原小春らダンサー陣とともに制作を行う過程で、自分との共通点・相違点を認識しつつ、彼らとの交流を「刺激的で面白い」と言えるような感覚。それらの出会いが今回のシングルにも影響を与えているそうだ。


今回の番組を聴く限りだと、米津は他者に対して「どうしてそうなんだろう」という興味を持ちながら接する傾向にある。そこには彼がよく言う「美しい」という言葉が関係しているように思う。米津の言う「美しい」は清廉潔白というような意味ではなく、おそらく、「クリエイターとしての自分が思う正義」というようなニュアンスである。先述のような出会いを通じて、他者の「美しさ」に触れる機会がここ最近特に多かったからこそ、今回のシングルでは自身の思う「美しさ」、内面的な色濃い部分と改めて向き合おうとしたのではないだろうか。

番組内で改めて明言されたように、米津が今回のシングルを通じて表現した「美しさ」は、主に2つあった。ひとつは、時代の流れに従って自分を作り変えることで初めて表現できる美しさがあるのだということ。もうひとつは、理想と現実の両方を宿していないと美しいものにはならないのだということ。ここで言う現実とは、つまり自身の歪さであり、言い換えると「どうしても変えられない」部分なのかもしれない。そういう部分を殺すことなく突き詰めていくことにより、ポップになりえるのでは?という話だ。


思えば米津は、長いこと「孤独」について歌ってきたし、そのようにして、自分と同じようなものを抱えながら生きる人(=社会の受け皿から零れ落ちてしまった人)に対して何かを伝えてきた。確かに米津の言う通り、今の彼がハチの頃のような楽曲を作っても、もはや当時と同じ場所に帰ることなどできない。しかしそれに通ずる哲学は今でも確かに生きているように思う。

先日公開された幕張ワンマンのライブレポートで「時代の寵児」という言葉を使った。今や米津は誰から見てもそういう存在だろうし、斬新なセンスで以ってJ-POPシーンに一石を投じていく様子は痛快ですらある。だがしかし、当然「新しいことをやっている=問答無用で素晴らしい」という話ではない。その先鋭的なエンターテインメントに、いち人間としての米津玄師の生き様がぴったりと重なっているからこそ、私たちはそれに深く魅了されてしまうのではないのだろうか。

「グズグズしながらグチャグチャしながら、傷つきながら生きていくのが美しいんだろうなあって思いますね」

番組は、そんな言葉で締め括られたのだった。(蜂須賀ちなみ)
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