め組が新作『ユエアイ』で放った5つの「愛」の形について

め組が新作『ユエアイ』で放った5つの「愛」の形について - 『ユエアイ』『ユエアイ』
め組の最新ミニアルバム『ユエアイ』は、新体制による初めての作品となった。現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』2019年11月号に掲載されたインタビューでは、メンバー5人が製作過程を振り返ってくれているけれども、5曲それぞれからクッキリと異なる心象を立ち上らせながら、その歌心をキラキラと輝かせるためにメンバー全員が尽力した、珠玉のミニアルバムである。

め組の、ライブにおける爆発力は凄まじい。個々に強烈な表現スキルを備えた5人が、思うさま感情を音に乗せて放つ姿は痛快だ。しかしそんな5人が、菅原達也(Vo・G)の作詞・作曲から生まれくるものを大切に慈しむように音源化したとき、め組のポップソングはこれほどまでに鮮やかに、ストレートに胸に飛び込むものになるのだということが、『ユエアイ』に触れれば一発で分かると思う。

《あなたの心臓の音を聞いてたい/この音と この温度で 生きてるんだなって》、《あなたの名前を指でなぞりたい/この線と この旋律で 生きてるんだなって》。『ユエアイ』の幕開けを告げるアップリフティングな“ななこおねいさん”のこんな歌詞は、決して特殊なフェティシズムに則っているわけではない。愛情が深まれば深まるほど、誰だってこういう気持ちに到達するだろう、という確認の歌になっている。ライブで観るめ組の異様なボルテージの高さやエモさは決して他人事ではなく、誰にだって身に覚えがある心の熱量や振動を伝えているのだ。

ポストEDMのバンドサウンドを情緒の彩りとして用いたアレンジがユニークな“お行儀の悪いことがしたい”では、《格ゲーしてる 君の指に/咲いた才能がきらきらり》という瞬間の感動を音楽の中に真空パックしてみせた。また、紆余曲折を経てこのバラードのアレンジに着地したという“故愛(ゆえあい)”では、《長さが違うものさしでお互いの/全部を全部を背比べてみたんだよ》と、人と人との価値観のすれ違いをかけがえのない経験へと昇華させ、じっくりと奏で歌っている。

真面目な演奏風景がフィーチャーされた“春風5センチメンタル”のMVからしても、リスナーの見るそれぞれの情景に歌を染み込ませようとする心意気が伝わるはずだ。ロック不況と言われる今日にあって、堂々たるビートロックが《触れるか触れないかの/たかが5センチメンタル/ぬるくなったポカリと一緒に飲み干して》という素晴らしい詩情を運んでいる。そして、大人になりゆく自我との格闘を切々としたトーンで刻みつけた名曲“駄々”が、今回の5曲を締めくくることになった。

『ROCKIN'ON JAPAN』のインタビューでは、菅原自身も歌を発信する者としての姿勢の変化について語ってくれていたが、そんなふうにリスナーとの距離感を見定めながら、め組の5人は高度な表現スキルを『ユエアイ』の5曲に注ぎ込んでみせた。その成果は、1ヶ月後の11月2日(土)から始まる「“愛ゆえに、ユエアイ”ツアー」(仙台・札幌・大阪・名古屋・福岡・東京の6公演)でさらに明らかになるだろう。楽しみだ。(小池宏和)

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