NHK『「天気の子」と僕ら~RADWIMPS×新海誠~』でラッドと『天気の子』の真実がいかに語られ、いかに鳴らされたか

「より高い次元で音楽と映像を融合させたいっていうのはすごくありました。前作(『君の名は。』)とは比べものにならないレベルでやれたなっていう想いがあって」――11月4日にNHKで放送された特別番組『「天気の子」と僕ら~RADWIMPS×新海誠~』の中で、RADWIMPS・野田洋次郎(Vo・G・Piano)は自身が主題歌とサウンドトラックを手掛けた映画『天気の子』をそんなふうに振り返っていた。

観客動員1000万人を超える大ヒットを記録した映画『天気の子』を、『君の名は。』から続くRADWIMPS×新海誠のコラボレーションにフォーカスを絞って解き明かした今回の番組は同時に、両者が体現してきた「音楽の/映画の可能性を更新していくこと」のリアリティをまざまざと映し出すものだった。

「一番最初に2年前にお話をもらった時に、『僕じゃない方が歌ったほうがいいと思います』って」(野田)、「『同じことを繰り返すのはやめましょう』っていうのは、たぶん最初からお互いに思っていたこと」(新海)という言葉からは、2作目となる共同作業を「新たな冒険」として明確に位置付けていたことが窺えた。そして、「前作(『君の名は。』)以上に今回は、一緒に作ってるっていう感覚を持たせてくれたので、監督が。とても信頼してくれたし、最後ゴールテープを切れた時は、前作以上の感動がありましたね」と語る野田の表情には、長い道程の果てに最高の果実を手にした充実感が滲んでいた。

オーディションで選ばれた女性ボーカル=三浦透子の歌の魅力について。「ビデオコンテを観ながら楽曲を制作→その楽曲に合わせて映像を調整&完成」という複雑なプロセスについて。「圧倒的なものをそこで鳴らさないと、あのふたり(帆高&陽菜)があそこで出会う理屈が通らない」(野田)という想いから生まれた“グランドエスケープ feat.三浦透子”サビの「合唱」のアイデアについて。「『この映画で何を言いたいのか』っていうのが、はっきりわかってなかった」という新海自身に映画の本質を指し示した“愛にできることはまだあるかい”について……。番組中では『天気の子』を巡る実に多くのことが語られていた。

映画内の“愛にできることはまだあるかい”が流れる場面では、楽曲に合わせて帆高が階段を駆け上がるシーンをビデオコンテの段階から長く伸ばしたと明かした新海。「帆高がすぐに屋上に着いちゃうから、あの廃ビルを建て増ししたんですよ」という言葉を受けて、「アニメってすごいでしょ? 『洋次郎さん、階段が足りません』って(笑)」と野田。そんな離れ業を軽やかに語るRADWIMPS&新海誠の空気感が、スタジオの100人の学生を自然と巻き込んでいたのが印象的だった。

この番組のもうひとつの大きな軸は、『天気の子』主題歌5曲のうち、“祝祭 feat.三浦透子”、“愛にできることはまだあるかい”、“グランドエスケープ feat.三浦透子”、“大丈夫”の4曲を、サウンドトラックの「Movie edit」ではなくフルバージョンで披露していたことだった。
大編成で響かせた晴れやかな合唱とともに、壮大な祝祭感をもって鳴り渡った“グランドエスケープ”は、高らかなクラップで彩られたエンディングによって目映いばかりの高揚の風景を繰り広げていた。

そして――今回がスタジオパフォーマンス初披露となったのが、「『天気の子』の物語の結末にも影響を与えた一曲」として番組の最後に演奏された“大丈夫”。
桑原彰(G)のコードストロークとともに《時の進む力は あまりに強くて/足もつかぬ水底 必死に「今」を掻く》と歌う野田の声が静謐な時間を描き出し、武田祐介(B)のベースのうねりとドラムの森瑞希&刄田綴色のしなやかなリズムが、ストリングス&リコーダーの音色と響き合いながら、雄大なサウンドスケープを編み上げていく。
一切の虚飾を排した《君の「大丈夫」になりたい》というパンチラインが胸に刻まれる“大丈夫”だが、《君がいると 何も言えない 僕がいた/君がいれば 何でもやれる 僕がいた》のフレーズをはじめ、「Movie edit」よりも複層的に帆高&陽菜の物語に寄り添いながら、映画の枠を超えて今この時代を生きるすべての人生を賛美するかのような包容力が、今回の“大丈夫”のスタジオパフォーマンスには確かに備わっていた。それはまさに、「映画と音楽の一体化」を超えた純度を楽曲に結晶させたRADWIMPSの進化の証明そのものだった。(高橋智樹)

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