ACIDMANが被災地とライブハウスに寄り添い希望をくれた3.11緊急生配信を観た

去る3月10日、「ACIDMAN・大木伸夫、3/11の19時から急遽生配信を実施」という報せが入った。事前にわかっていたのは「大木から何かしらの発表がある」という情報のみ。「緊急」という言葉も相まって、当日は妙な緊張感をもって画面の前で待った。
この日は、「ACIDMAN LIVE in FUKUSHIMA 2020」が開催されるはずだった。東日本大震災以降、毎年ACIDMANが福島で開催してきたワンマンライブだが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、残念ながら中止となってしまったのである。

時間になると登場したのは、どこかの事務所のような場所でソファに座る大木伸夫(Vo・G)。緊張した面持ちながらも、「ハローユーチューブ!」と挨拶するなどお茶目な様子が微笑ましく、不穏な雰囲気が漂う昨今、こうしてなごやかな気持ちにさせてくれるのがとてもありがたいなあ、と思う。
大木の口から語られたのは、新型コロナウイルスの影響で多くのミュージシャンが困難に直面していること、一方でこの脅威に正しく対応すべきこと。そして、9年前の大震災の影響が、今なお消えていないということ。
震災の話になると、「ちょっと待ってね」と時折感極まり言葉に詰まりながらも、じっくりと考え、真摯に語る姿にこちらも背筋が伸びる。

そして「移動してもいいですか」とソファから立ち上がった大木、そのままどこかへ向かい階段を下りていく。それを追うカメラ。ここでも「チャンネルはそのまま……」、「カメラを止めるな!」などとおどける大木に笑いつつ、どうやら向かった先はライブハウスのロビーであることに気づく。「やはり僕は今日、福島に来ました」、「ライブをやろうと思います」とフロアへのドアを開けるとステージには佐藤雅俊(B)と浦山一悟(Dr)の姿が! そこは南相馬バックビート。「LIVE IN FUKUSHIMA 2020、中止じゃなくて生配信でいくぞ!」という熱い宣言とともに“造花が笑う”に突入! 私も自宅にいることを忘れて思わず声と拳をあげてしまった。

今回、詳細を伏せて「緊急生配信」としていたのは、ファンが会場に足を運んでしまわないようにという配慮だったそうだ。スタッフも最小限の人員で運営し、カメラもたった一台。一台のカメラで回される映像はかえって生々しい臨場感があり、ライブハウス最前で3人を見上げているような気持ちにもなった。

その後も“波、白く”、“FREE STAR”、“赤橙”……と強力なナンバーを連発する中、“ある証明”で大木の前を謎の影が横切ったと思うと、ステージに現れたのはMAN WITH A MISSION・トーキョー・タナカ(Vo)! 「熱い気持ちで東京から駆けつけてくれた」という更なるサプライズに、視聴者も興奮しっぱなしだったのでは。

そして、最後に披露されたのは“灰色の街”。「灰色の世界で、音楽だけは美しく心の中までも彩りますように」という言葉に胸がいっぱいになる。3年ぶりの新曲として6月3日(水)にリリースすることも発表されたこの曲は、昨年の「創、再現」ツアーにて初披露された。私はその初日とファイナルを観ることができたのだが、ライブとともに、オーディエンスとともにすくすくと育ってきた楽曲だと実感している(きっと、ACIDMANのどの曲もそうであるが)。楽曲自体は数年前から存在したそうだが、ツアーを経てオーディエンスと一緒に歩みを始めたこの曲が、さらに披露を重ねて、きっとバンド自身も知りえないいっそうの進化を遂げることを予感させられた。だから、またライブで会えるのが楽しみになった。一日も早くライブハウスで会えるように願った。

MCで大木は「ライブっていうのは、人の想いが集まって、夢や希望に溢れてて、そしてそれが文化になって歴史になって、人に感動を与える、素晴らしい場所」と優しく呼びかけていた。「思考すれば、考えれば、世界は良くなっていく」とも。ラストには、『灰色の街』リリースに伴うワンマンツアーを7月から開催することも発表。「またライブで会いましょう!」その言葉をお守りに、前向きにその日を待ちたい。なお、今回の配信のアーカイブ映像が「ACIDMAN 生配信ドキュメントライブ」と題し3月31日(火)まで視聴可能だ。見逃した方はぜひ、ご覧いただきたい。(徳永留依子)
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