次の号に向けて、今年度のアカデミー賞に関わる作品をチェックしているのだが、最近観たのは『キッズ・オールライト』。ザ・フーの代表曲から取ったタイトルだけど、その内容は21世紀ならではのファミリー・ドラマ(母ふたり&姉&弟)。
ただオープニングではヴァンパイア・ウィークエンドが、エンドロールではMGMTが使われていて、さらに劇中ではデヴィッド・ボウイが絶妙に使われていたり、ドラマの核にはジョニ・ミッチェルの『ブルー』があったりと、ロック好きにも“ニヤリ”な演出が多い映画ではある。
しかしこの映画の最大の見所は、出演俳優たちがアカデミー賞をはじめ、全米のアワードで評価されていることが物語っているように、役者たちの演技の絡みにつきるんじゃないか。
ドラマ自体は“同性愛”というテーマを除くと、わりと誰もが共感できるものだと思うけど(特に既婚者)、それをずば抜けたテクニックを持って演じ切った大人組(アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ)と、それを天性の技量でさらりと成し遂げた若手組(ミア・ワシコウスカ、ジョシュ・ハッチャーソン)には本当に圧倒される。
意外と笑える映画でもあることもポイント高い。(内田亮)