『劇場版BUCK-TICK バクチク現象』、初号試写を観た!
2013.06.07 01:46
スクリーンに映るBUCK-TICKが、とにかくかっこいい! そして、泣ける! さらに、映画のために書きおろされた新曲2曲がやばい! と、色んな意味で素晴らしい映画だった。本物のロックバンドだけが描くことができる夢物語を、BUCK-TICKというフィルターを通して描いた作品。であると同時に、25年経ってこんなにたくさんのフォロワーがいるにもかかわらず、究極の異端児であり続ける「BUCK-TICKとは一体何なのか?」という永遠の命題にひとつの答えを与えてくれるドキュメンタリーでもある。
ロックバンドを題材にした映画は洋邦問わずたくさんある。けれどもそれを映画にする場合、ドキュメンタリーとはいえ、たとえば解散ライブだったり、スタジアムバンドをライブハウスキャパで撮ったらどうなるのか?という監督のむちゃぶりな発想があったり(スコセッシ×ストーンズ『シャイン・ア・ライト』のガチンコ映像のように)、U2の3Dという新たな方法論への挑戦だったり、といった何かしら特別なテーマがある場合が多い。けれども本作のテーマは「BUCK-TICK」という現象そのもの。25周年を迎え、怒涛の活動を行った2012年にひたすら密着し、レコーディングやライヴを1,500時間も撮り続けることで、その本質を浮き彫りにしていく。
まず、こんなとこ見せちゃっていいの!? 聞かせちゃっていいの!? という普段は映されない場所までカメラが立ち入ることで、かつてなく彼らの素顔が見える。といっても覗き見的なものではもちろんなく、ある必然に貫かれている。たとえばツアー中に誕生日を迎え、年を重ねていくメンバーもいるわけで、つまり彼らにとってはこのツアーそのものが日常であり、人生そのものだということだ。夢の道具(機材や舞台セット)をのせて走るトラックととともに、彼らは全国を行き来し、ステージと楽屋を行き来しながら、夢を現実として生きている。
今井寿は以前インタヴューで、高校時代には「バンドを職業にしたいと思った」と語っており、「これからやりたいことは?」「バンド」と答えている。つまり彼らにとっての25年間とは夢を現実にし、現実を夢にし続けてきたわけだ。その5人の連鎖運動の微妙なメカニズムと、それがかみ合った瞬間のダイナミズムに感動する。
また、映画からインスピレーションを得たようなシアトリカルな彼らのステージを、逆にスクリーンで観るパラドキシカルな体験も面白い。ツアーではお馴染みの、将校のようなコスチュームでステージに立つ櫻井敦司を映画館でみると、まさに『キャバレー』や『地獄に堕ちた勇者ども』のようでわくわくする。
2011年12月29日の日本武道館から翌2012年12月29日までの怒涛の1年間が、『I』、『?』と二部にわけて描かれ、テーマ曲もそれぞれ新曲が書き下ろされているわけだが、この楽曲がいずれも名曲。
星野英彦作曲による壮麗な王道バラード『LOVE PARADE』は、櫻井の歌詞も含めてほんと泣ける。リスナーを包み込み、夢の世界へ誘ってゆく。そして『STEPPERS‐PARADE‐』は今井節炸裂のグラマラスでイケイケなマーチ・ソング! 25周年が終わっても、BUCK-TICKというPARADEはずっと続いていくことを告げると同時に、劇場に座っている観客の人生のケツを叩くような曲。まさにBUCK-TICKの音楽の神髄だ。
6月15日〜、22日〜とそれぞれ2週間限定上映、期間が短いのでお見逃しなく!!
http://bt-movie.com/
(井上)