津村記久子とPUNKSPRING 後編

津村記久子とPUNKSPRING 後編

昨日の15:55にアップしたブログの続きです。

明日発売のSIGHT40号掲載の「作家インタビュー」のページでカットしてしまった、でももったいないのでここに載せることにした、第140回芥川賞作家、津村記久子と、PUNKSPRINGの話。

津村記久子「婚礼、葬礼、その他」
文藝春秋 2008年7月5日刊行 ¥1,143+税

「婚礼、葬礼、その他」と「冷たい十字架」の、中篇2本が入った単行本。
前者は、友人の結婚式の二次会の幹事を任された正にその日、突然会社の偉い人の父親が亡くなってその葬儀に駈り出され、うわあ困ったどうしよう、というパニックを描いた作品。
あまりにリアルすぎて、身につまされつつもめちゃくちゃ笑える。傑作と言えましょう。

で。これ、友人の身に起きた実体験からアイディアを得て、書いた作品なのだそうだ。
ただし、実体験のほうは、結婚式の二次会ではなくPUNKSPRINGだったのだという。
こないだの4月のではなく、2年くらい前のです。
以下、ご本人の説明。笑ってるだけの相槌は私です。


津村 人生やっぱり、全然知らんじじいの葬式にどうしても出なあかんとか、あるじゃないですか。友達と1回目のPUNKSPRINGに行ってた時に、エルレガーデンを観る前に、友達が呼び出されたんですね。

●はははは。最悪ですね(笑)。

津村 最悪なんですよ(笑)。で、真っ青になって帰ってきて、「上司のお父さんが死んだ。行かなあかん」って言って。私、全然ピンとこなくて、「別におったらいいやん。行かんでもいいやん」とか言ったんですけど、「いや……どうしたらいいか……」って言いながら、2人でエルレガーデン観て。

●(笑)。

津村 私、その時初めてエルレガーデン観たんですけど。「すごいなあ」とか、アホ面で言いながら観てて。で、友達が、タイムテーブル見ながら「一体どこで帰る?」っていうので、ずっと悩んでて。バッド・レリジョンが観たかったんですよ。バッド・レリジョン、トリやったから。「シュガーカルトで昼ごはんかな」とか、ずっと言ってて。で、結局バッド・レリジョン観ずに、MxPx観て帰ったんです。「でも、MxPxはトリの価値があるから」とかって言って、自分を納得さして。

●はははは。

津村 それが元で、「婚礼、葬礼、その他」を書いたんですね。「そんなことを書いてどうなのか」って思うんですけど、書きたいんで(笑)。そのままPUNKSPRINGで書いたほうが、よりリアルで、たぶん面白いはずなんですけど、PUNKSPRINGを知ってる人しかわかんないんで、「じゃあより理不尽なことっていう設定にしよう」っていうんで、「結婚式にしよう」って書きはじめるんですね。それがほんまの話ですね。

●面白い(笑)。

津村 「いいわ、“Punk Rawk Show”聴いたから帰るわ」って言って。「これでいい」とか言って、すごい涙ながらに帰っていきました。そんなことは往々にしてあるし、じゃあその子が観たくて観たくてしかたがなかったバッド・レリジョンを観れなかった悲しさと、例えば難病にかかるとか、彼氏が死ぬとかっていう悲しさに、あんまり差を……実際の生活では、そこには差はあるんですけど、小説上では、あんまり差をつけたくないな、っていう。で、それがあんまり受け入れられるような気はしませんが、私はそういうことを書き続けると思います。


というお話でした。最後、シリアスな話になっているのも、なんかいい。
関西在住のみなさん。サマーソニックやPUNKSPRINGの会場で、何か「思いついたっ!」「これ使える!」って顔をしている女子がいたら、それは津村記久子かもしれません。

これ以上にさらにいい話、明日5月30日発売のSIGHT40号で、いっぱいしてくれています。
話のあちこちで、とても共感できると思います。
ぜひ。
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