ジョージ・ハリスン映画を観て思ったこと


日本でも11月19日(土)から一般劇場公開が始まった、

★ジョージ・ハリスンの伝記ドキュメンタリー映画=『リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』。

ここUKでも10月2日にプレミア上映が行われた後、

先週末の11月12(土)+11月13日(日)の2日間に分けて(全3時間半の大作)、
英BBC2テレビでフル・ヴァージョンが放映されていた。


で、脱稿した今週末、初めてちゃんと観たのですが、
(TV放映された先週末は〆切直前だったので見る余裕がなく、録画しておいた)、


★「戦後物質主義社会で初の好景気ブームを作った新興産業」=近代ポップ界で最も成功したバンド、ザ・ビートルズの一員でありながら、

「最もスピリチュアルなビートル」だった”矛盾”に葛藤するハリスンの人生を浮き彫りにしていく、この映画。

興味深い観点をいくつも提示してくれる。

一回観ただけではとても全体像を掴みきれないので、
初見で個人的に印象に残った「出演者のコメント」をざっと抜粋してみました。


(1)ビートルズが世界的な名声を初めて手にした頃を回想しながら、
「新聞や雑誌などで自分達の写真を見てもそれが自分だとはとても思えないんだよね。
確かに紙面にあるのは自分の顔なんだけど、なにか全く別の他人を見ているような感じなんだ。
(名声の当事者としては)これが自分だという実感が湧かないんだよ。
(ジョージ・ハリスン)」


(2)後期ビートルズのジョージを回想しながら、
「あの頃のジョージは世界で最も成功したバンドの一員であることより、
一匹狼的なソロ・アーティストである僕の自由なポジションに惹かれていた。

それに僕とジョージは個人的な趣味も似ていて、
普通の男が好みそうなかっこいい服や車とかも大好きだったよ。
あ、勿論”女”の趣味も似てたな(苦笑)(パティ・ボイドを暗示?)。
(エリック・クラプトン)」。


(3)「ジョージは(スピリチュアル面に人一倍興味があった反面)、
普通の男が好きそうな世俗的なものも全部好きだったよ。
奴も”生身の男”だったからね。
(ポール・マッカートニー)」


(4)「僕が初めて会った頃のジョン・レノンは”4本弦”でギターを弾いていたんだ。
初めてそれを見たとき思わず『ええっ!お前、何て弾き方をしてるんだ?』って奴に言っちゃったよ。
初期ビートルズの楽器に対する知識はその程度だったんだ。
(ジョージ・ハリスン)」。


(5)「ジョージが書いた”サムシング”を、
『これは間違いなくシングル・ヒットだから、次のシングルとしてリリースするべきだ』
とバンドの皆に熱心に提案したのはジョンだった。
ジョンはそういう面でもいつもジョージを影ながら助けていたのよ。
(オノ・ヨーコ)」。


(6)「キリストの生涯をパロった不届きな映画!ということで世界中のキリスト教圏で抑圧され、
どの製作会社もタッチしたがらなかったモンティ・パイソンの問題作『ライフ・オヴ・ブライアン』の制作費を工面するために、
自分の家を担保に入れて(!)までハンドメイド・フィルム(J・ハリスンが立ち上げた映画制作会社)を創立し、
映画の制作費全てを担ってくれたのがジョージだったんだ。
あの時ジョージが名乗り出てくれなかったら、あの映画は実現すらしていなかった。
(テリー・ギリアム)」。


等々、考えさせられるシーンは無限にあるのですが、
これ以上タネ明かしをすると皆さんの楽しみが減るかもなので、
今日はこの辺で。

全てのビートルズ信者や音楽ファンだけではなく、
”近代ユース・カルチャー”の何たるか?を知りたい方々にとっても必見の映画だと思う。
児島由紀子の「ロンドン通信」の最新記事
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