ミュージカル俳優としての坂本真綾

ミュージカル俳優としての坂本真綾

おとといの話だが、坂本真綾出演のミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』を観た。

彼女はこの作品で菊田一夫演劇賞を受賞しているわけで、どうにも月並みな言い方になってしまうが、本当に素晴らしいパフォーマンスだった。

ファンならきっと共感してもらえると思うが、例えば声優としての坂本真綾は感情移入してなんぼという芝居をせず、それこそひとりの人間としてそこにいる、という佇まいで物語を作り出せる人だ。
それはミュージシャンとしても同様で、他者が書いた歌詞にも、坂本は坂本自身が歌うべき解釈と必然性を自分で見つけながら、奥行きのある物語性を与えることができる。
ただ、彼女自身は特に難しいことをやっているように見せず、洗練された所作そのものですべてを行っているように見える。それが不思議だった。

ミュージカルを観てすべてが腑に落ちた。
きっと恐らくいかなるチャンネルにおいても、彼女にとっては、すべての力を等しく使っての表現なのだろう。
シンガーとしても、声優としても、舞台に立つ役者としても、やることは何も変わらない、体と感性と経験のすべてを使っているということなのだろう。

そして、自身そのものイコール表現であるという意味においてもっとも肉体的でラジカルなのがミュージカルである、ということだ。
あえて言うなら、もしかすると、坂本真綾のもっともロック的な表現は舞台で見られるのかもしれない。

歌、芝居、佇まい、演出、すべてが一流の、本当に素晴らしい舞台だった。
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