ザ・チェインスモーカーズのNYライブにみたメインストリームの最新型。

ザ・チェインスモーカーズのNYライブにみたメインストリームの最新型。

待望のデビュー作『メモリーズ…ドゥー・ノット・オープン』が発売され、全米チャートでも見事1位を獲得したザ・チェインスモーカーズ

発売記念のイベントでは「今回のツアーは、バンド形態になるから楽しみにして欲しい」と言っていたことと、その発言から、彼らに対する偏見を打破し、バンドの真価を理解してもらいたい、という思いが強く感じられたのが印象的だった。イベントのレポートはこちら。
ザ・チェインスモーカーズ、成功と孤独、ボノの参加など、新作を語り尽くす。NYでのイベントの全貌紹介。映像あり。
ザ・チェインスモーカーズが、待望の新作『メモリーズ…ドゥー・ノット・オープン』の発売を祝して、マンハッタンの超オシャレエリアにあるSAMSUNGのクールな体験型ショールームにて貴重なイベントを開催。ラッキーなファンが招待され、大変な盛り上がりを見せていた。 実はその時の模様は彼らのフ…
ザ・チェインスモーカーズ、成功と孤独、ボノの参加など、新作を語り尽くす。NYでのイベントの全貌紹介。映像あり。

NYで行われた彼らの最新ツアーを6月10日に観たのだが、そんな彼らの思いがしっかりと伝わる内容だった。会場は、フォレストヒルズ・スタジアムで、キャパは、約16000人。2日間ほぼソールド・アウト。
会場に集まったのは、10代後半から20代が中心、男女半々くらいで、誰もがこの夏最初のパーティを楽しみたいというモードで集まっているように見えた。実際この夏最高のパーティのひとつになったと思うのだけど、それは“パーティ”以上のもので、半分ロック・コンサートとも言えるような展開だった。
簡単に言うと、ダンスシーンとロック・コンサートのおいしいところ両方を取ったような、これまでになかったようなメインストリーム・ポップの最新型とも言える内容だった。

ザ・チェインスモーカーズのNYライブにみたメインストリームの最新型。

ライブは、DJセットで始まり、”The One”や、”Kanye"、”Inside Out”などで盛り上げるだけ盛り上げる。
パイロも、スモークも、花火も出し惜しみなく使われ、会場が揺れまくる。しかし、それだけで押しまくるわけではなく、”Closer”が演奏されれば、踊るというよりは、会場は割れんばかりの大合唱になる。
ドリューが歌わなくても曲が成立してしまうくらいの状況だった。ちょうど、夕日も落ちて来てメランコリーな雰囲気とこの曲のエモーションがあまりに合っていた。

ザ・チェインスモーカーズのNYライブにみたメインストリームの最新型。

さらに”All We Know”などでも、スローな展開からアレックスが「3、2、1」と言うかけ声をかけると花火がドンと上がり、メランコリーなムードから一気にパーティの盛り上がりを見せる。しかも、そこからふたりの立っているステージがぐんぐん上に上がっていくというだめ押しの演出も。
また、この日は、エミリー・ウォーレンが前座で、新作からの”My Type”や、”Don't Say”で、バンド演奏をバックに彼女がしっとりと歌い上げたときの観客の感動も大きかった。

ザ・チェインスモーカーズのNYライブにみたメインストリームの最新型。

かと思えば、再びDJセットでは、ダフトパンクをつないで盛り上げ、途中でアレックスがいなくなって困ったドリューがiPhoneのプレイリストをかけるという演出もあって笑った。しかも、そこでかけたのが、”Don't Stop Believin'"といったベタな選曲だったのもまた良い。会場はなごみながらの大合唱となった。
空気がほぐされたところで、再びバンドとエミリーが登場し、大ヒット曲の”パリ”でハイライトと言える盛り上がり。そこからDJセットで、コールドプレイとの共演曲”Something Just Like This”を披露。さらに花火が上がるという展開で盛り上がりの頂点を極めるセットリストだった。
本編を締めくくったのは、"Don't Let Me Down”では、パイロも上がるし、花火も上がるしで、誰もが感極まる締めくくり。

ザ・チェインスモーカーズのNYライブにみたメインストリームの最新型。

アンコールで興味深かったのは、ドリューがエレキを抱えてバンドと出て来たこと。そこで演奏されたのが、”Last Day Alive”で、これがライブの最後で泣かせることを想定して書いたんじゃないかと思えるくらい感動的に盛り上がった。しかも、ドリューが最後にエレキを高々と掲げると、そこで花火が上がり、紙吹雪が舞い、持ち得るすべてのステージ演出を出し尽くす。

ザ・チェインスモーカーズのNYライブにみたメインストリームの最新型。

つまり花火もあるし、パイロもあるし、紙吹雪もあるし、照明の形も変わり続ける。LEDライトもあるし、ステージは上下するし、DJセットもあるし、バンドも出て来るし、スクリーンには絵文字風イラストから、コミックが映し出されるし、iPhoneを使った演出もある――とにかく、多種多様な仕掛けがあるライブだった。常に1曲の中で5つくらいの仕掛けが飛び出すのだ。
しかし、何が最も感動的だったかと言うと、彼らがそういう演出に頼って無理に盛り上げている感じには全然みえなかったこと。あとは、たとえば3分間の楽曲の中でいくつもの展開があるのに、それによって目が回ってしまう、という風でもなかったこと。
それは思うに、まず曲にそこまでの変化に耐えうる強さがあるということと、このような展開が今のキッズが生きる普通のスピードだということのなのだろう。だから、どこを取っても無理がなかった。

また、DJとして場数をこなしているだけに、これだけ色々な仕掛けがありながら、全体の流れもスムーズ。
DJ→バンド→DJ→バンドという展開も、いつのまにか変わっていたように思えるくらいだった。

最初はDJで始まったはずなのに、最後に、ドリューがエレキを掲げてライブが終った時に思ったのは、彼らがDJでも、ロックバンドでも、どちらでもない、今のメインストリームにおいてこれまでなかったポップ・アーティストの形を作ってしまったなあということだった。
インスタグラムや、スナップチャットに夢中になるキッズを否定するのではなくて、その中でいかに感情的な結びつきが可能なのかを彼らは見せていた。それが彼らの存在価値を証明していたし、そのためにまったく手を抜くことなく全力を尽くしていた。
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