“Mearcstapa”
ライブ映像
これは私のインタビューではなくて、その曲がどのようにできたのかをとりわけ技術的なことを事細かに語る“Sound Exploder”というPodcastがあって、個人的にも大好きなシリーズなのだが(サブスクラブをお勧めします)、そこでロビンが語っていたもの。彼の書く曲は、すべてにおいて細かい意味と物語があって、本当に面白いのだけど、その一端がこれで分かってもらえるはず。
ロビンはこの曲がどのようにできたのか約20分で話している。内容は、かなり省略しても以下の長さだ。
「この曲は2015年の12月に書いた。ソロで、ジョアンナ・ニューサムの前座をする準備をしていた時にね。その当時は大学に通っていて、英文学を専攻していた。本当は、大学に通うつもりだったんだけど、彼女に頼まれたら、ノーとは言えなかった。だから、期末テストを全部受けなかったんだ(笑)。それで曲をいくつも書いて、これがその時書いた1曲だった。
この曲は、当時マリのギタリスト、アリ・ファルカ・トゥーレを聴いていたから彼に影響されて作った曲だ。
僕は、15歳から曲を書き始めて、いつも変則チューニングをやりたいと思ってきた。だから、とうとうこの曲でそれを試してみようと思ったんだ。とりわけ、アリ・ファルカ・トゥーレは、ローEストリングを、Gのようにチューニングしているからね。それでそのGとAを演奏すると、違う音が聴こえてくる。それを、アリ・ファルカ・トゥーレから学び、僕は、E, B, GをF, A, Cでチューニングしたんだ。だから、ギター・コードは、G, A, D, F, A, Cになっている。
それで、そのコード進行から、セーリングをしているイメージが湧いてきた。それは、ツアーをしている時をも彷彿とさせた。そこから歌詞が生まれたんだ。それから父親が、セーラー(船員)でもあったんだよね。父とはここ数年セーリングをしたりもしていたんだ。
さらに、Bernard Moitessier(セーラー)についての本を読んでいた。彼は、世界一周のレースに出て、1位でゴールできたにも関わらず、航海を止めたくなくて、ゴールを見た瞬間に、またそのまま航海に出てしまった人だったんだ。だから、自分の道を突き進むということに対するヒーローだと思った。
このアルバムでは、歌詞について迷ったら、サウンドがどういう方向に向かっているのかを考えることが多かった。だからこの曲の始まりは、“Two Lines in the Air”と歌っている。これは、船から見た船の艤装のことであり、また、本当に文字通り、自分がその時、ギターで二つのラインを演奏していることについてでもある。
“Mearcstapa”という言葉をどこで初めて聴いたのか覚えてないし、どこの言葉でどんな意味なのかも知らなかったんだけど、後で、『ベオウルフ』に出てくる巨人の怪物の名前だとわかった。この言葉は、すごく歌うのが難しい。でも、フランク・シナトラのように、優雅に歌いたくて苦労したんだ(笑)。それって徹底的に間違っていると思ったんだけど、どうしてもやりたかったんだ(笑)。
mearcstapaという言葉自体には、境界線を歩く人という意味がある。それは、Bernard Moitessierについても言えるし、自分自身も常に旅に出ているから、自分は常に水と空気の間にいると思った。他の人たちから離れて、自分だけ人とは違う旅をしている。そう考えた時に、この言葉が僕にとっては大事な意味を持ち始めた。そこから、セーリングにも共感し始めたんだよね。
僕は曲を書いていた時に、ニューヨークの小さいワンルームのアパートに住んでいた。家具も何もなくて、机と、床に敷いたマットレスがあるだけだった(笑)。学生と僧侶の間みたいな感じだったんだ(笑)。そこに僕とこの曲がある、というだけの毎日だったんだ。
最初はアコギで弾いていたんだけど、でも、この曲にはエレキギターで弾くべきだと思った。
この曲は、ビーチ・ボーイズの曲の上で、カンの曲が響いているような曲だとイメージしていたんだ。ビーチ・ボーイズは、開けた感じで、複雑なハーモニーがあり、そして優雅さがある。そこが大好きだったんだけど、でも、カンはその逆だ。すごくタイトだ。空気に放たれる感じではなくて、地に足がついている。だから、空気感のあるサウンドと、地に足がついたサウンド、この曲では、二つの別々の感情が一緒に存在している。
ハープシコードのサウンドは、美しいけど、あまりに繊細すぎるから、それをピッチダウンして、デジタルのような効果音にして、それが少し不気味で不安定な感じを出している。
12弦のエレキギターは、GADFACにチューニングされていて、スカイラーの撮った写真で演奏しているんだ(笑)。ギターのピックだと音が硬くなりすぎて、もっと柔らかい音にしたかったからね。
スカイラーは僕のバンド・メンバーで16歳くらいの時から一緒に曲を作り始めた。彼はこの曲では、テキスチャーを作る役割をしている。
曲の後半が一番面白くて、それはスカイラーの貢献によるものだ。ホーン・セクションは、海の下のようなもごもごした音と、太陽を見ているようなクリアなサウンドが一緒に鳴らしている。
ボーカルは、クリアで、船が動くように、優雅で、長いものにしたかった。
それから、事前に設定された“フリート・フォクシーズ”という名前のハーモナイザーを使って歌った部分がある(笑)。それは売り物なんだけど、それを使ったら笑えると思ったんだ。それをピッチアップした。そのまま使うと、フリート・フォクシーズと言うよりは、ボン・イヴェールみたいだったから(笑)。
曲の終わりで使っているストリングスのメロディは、僕がボイスレコーダーに入れていたメロディで、それを弾いてもらった。それがフェイドアウトしていく。この曲では、様々な楽器を使って、大きなサウンドスケープを作りたかった。そうすることで、全体として、独自の存在にしたかったんだ。だけど、どんな楽器を使ったのかは、あまり大事ではないというものにしたかった。
この曲では、僕は、もう一人の僕に話しかけている曲。僕は当時よく一人で旅をしていた。それは、一緒に行ってくれる人がいなかったこともあるし、一人で旅することにどこかロマンチックな概念を持っていたから。この曲は、“泡は歌わない/電話は鳴らない/そんな時僕のMearcstapaはなにを見つけるのか?”と言って終わる。つまり、一人で旅した時、自分は何を成し遂げるのか?と問う曲だ。人生というのは、本当は他の人たちと一緒に分かち合ってこそ、素晴らしいものなのに、というね。つまり、僕は一人でいたら、人生というのは、ないに等しい、と言っているんだよね(笑)」
去年公開されたラジオでのライブ映像。
(setlist : “I Am All That I Need / Arroyo Seco / Thumbprint Scar” “Third Of May / Ōdaigahara” “Fool's Errand” “Mearcstapa”)
近日のセットリスト
1月11日ニュージーランドでのライブ。
1. I Am All That I Need/Arroyo Seco/Thumbprint Scar
2. Cassius,-
3. Grown Ocean
4. White Winter Hymnal
5. Ragged Wood
6. Your Protector
7. The Cascades
8. Mearcstapa
9. On Another Ocean (January/June)
10. Fool’s Errand
11. He Doesn’t Know Why
12. Blue Ridge Mountains
13. Tiger Mountain Peasant Song
14. Mykonos
15. Battery Kinzie
16. Third of May/Odaigahara
17. The Shrine/An Argument
18. Crack-Up
Encore
19. Oliver James (Robin Solo)
20. Drops In The River
21. Helplessness Blues
『クラック-アップ』の詳細は以下の通り。
フリート・フォクシーズ『Crack-Up / クラック-アップ』
2017.06.16 発売¥1,980+税/WPCR-17767
https://itunes.apple.com/jp/album/crack-up/1209098746
※Tunes、iTunes Storeは、Apple Inc.の商標です。
来日公演の詳細は以下の通り。
【東京】
1/18 (thu) Zepp DiverCity
open 18:00/ start 19:00
前売り:¥7,800(1F-立ち見/1ドリンク別)¥8,300(2F 指定席/1ドリンク別)
問い合わせ:03-3444-6751(SMASH)
【大阪】
1/19 (fri) BIG CAT
open 18:00/ start 19:00 前売り:¥7,800(立ち見 /1ドリンク別)
問い合わせ:06-6535-5569(SMASH WEST)
協力: Warner Music Japan
問い合わせ:SMASH03-3444-6751smash-jpn.com smash-mobile.com