オリヴィア・ロドリゴ待望の新作『ガッツ』は、女性視点のロックアルバム! 彼女をプレッシャーから救ってくれたのはジャック・ホワイトからの手紙。

オリヴィア・ロドリゴ待望の新作『ガッツ』は、女性視点のロックアルバム!  彼女をプレッシャーから救ってくれたのはジャック・ホワイトからの手紙。

9月8日の発売を、現在世界が指折り数えて待っているオリヴィア・ロドリゴのセカンドアルバム『ガッツ』。

オリヴィア・ロドリゴ待望の新作『ガッツ』は、女性視点のロックアルバム!  彼女をプレッシャーから救ってくれたのはジャック・ホワイトからの手紙。

アルバムに関する初のインタビューが、NYタイムズに掲載された。

この中でインスピレーションとなったのは、彼女のヒーローでもあるジャック・ホワイトから、ビキニ・キルのキャスリーン・ハンナ、セイント・ヴィンセントなどで、『ガッツ』はロックアルバムであると語っている。

それも、あくまでフェミニンなロックであり、「これまで男性が作ってきたロックを再現するようなものではない」。普段は女性が表現できないような「怒りやエモーション」が炸裂したロック・アルバムになっているみたいだ。私は皆さんと同様に現在発表されている2曲しか聴いてないです。

オリヴィア・ロドリゴ待望の新作『ガッツ』は、女性視点のロックアルバム!  彼女をプレッシャーから救ってくれたのはジャック・ホワイトからの手紙。

先にアルバムを聴いているNYタイムズの記者も、彼女は現在世界一のポップスターの1人だけど、今作での「彼女はシンプルに、ロックスターである」と書いている。そして、いかにして彼女がロックよりなアルバムを作るに至ったのかを検証。

以下、新作に関して分かったことを要約。

1)窮地から救ってくれたのは、ジャック・ホワイト:
デビュー作の『サワー』が記録的な大ヒットとなり、セカンドを作るに当たってとてつもないプレッシャーを感じたオリヴィア。彼女を救ってくれたのは、彼女の「アイドル」ジャック・ホワイトからの手紙だった。それを思い出してプレッシャーから脱出したそう。

「初めて会った後に、彼が手紙を送ってくれたのだけど、そこに書かれていたのは、『君の唯一の仕事は、自分がラジオで聴きたいと思うような曲を書くことだけだ』だった。ただ、自分がラジオで聴きたい曲を書くって実はかなり難しいんだけどね」

インスタでは自分のヒーローである、ジャックに初めて会った時に、嬉しくて泣いてしまった、と書いていた。

ちなみに私がジャックにインタビューした時、オリヴィアに会った後だったので、彼にオリヴィアについて訊いたらこう言っていた。

「彼女は『自分1人対全世界』みたいな態度のシンガーソングライターだから、それが素晴らしいと思う。そういう新世代を見るのは最高だよ」

2)キャスリーン・ハンナと、セイント・ヴィンセントもオリヴァアを称賛:
オリヴィアが心の師と仰ぐ2人も、彼女を絶賛している。

キャスリーンは、「”drivers license”を初めて車で聴いた時泣いた」と語り、彼女が、グラストンベリーで最高裁の中絶に関する決断を批判したことや、彼女のステージがライオット・ガールに影響を受けていることも称賛。

「今の若い女性たち、とりわけオリヴィアは、ソングライターとして優れていて、思っていることをすごく複雑な方法で表現できるから感動する。それから、音楽を本当に愛するメインストリームの人が、ステージ上でアンダーグラウンドの音楽スタイルに影響を受けているのを見るのも最高」と語っている。

セイント・ヴィンセントも「あんなに若くて、落ち着いている人を見たことがない。彼女は自分が誰なのか、何がしたいのかが分かっている。それから、それを声に出して言うことを全く恐れてない。しかもすごく素敵な女の子で、他の人を悪く言っているのを聞いたことがない」と語る。

3)ロック寄りのアルバムだが、男性が作ってきたロックの再現ではない:

「ロックが大好きだったから、自分らしいサウンドのロックで、かつフェミニンな感じがして、ストーリーテリングがしっかりできて、か弱さや親密性のあることを語れるものを探求した」
「ロックミュージックでそれを表現し、だけど、これまで男性が作ってきたロックを再現するようなものにはしたくなかった」

両親が90年代バンドの音楽を好きだったことが彼女のベース。
プロデューサーのDan Nigro と基本的には2人で制作。
アルバムの中には、フルバンドで、ライブレコーディングした曲がある。

また『サワー』で最後に書いた曲は”brutal”だったので、そこからの延長線上として、よりグランジに影響されたサウンドが出発点。

ちなみに、”brutal”は『サワー』ツアーのオープニングで、その時『ロッキング・オン』2022年7月号のレビューにも書いたのだけど、そのステージは、ほとんど、ニルヴァーナの”スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”のMVの2023年版みたいだった。全体的にもパンクバンド的なアプローチだった。
https://rockinon.com/blog/rockinon/202852

バンドメンバーは、全員が女性かノンバイナリー。そのツアーのリハーサルをした時、こう思ったそう。

「リハーサルをした時にめちゃくちゃヘヴィに感じた。目から涙が溢れ出て来て、なんてパワフルなんだろうと思った。これこそ私が14歳の女子として、YouTubeスクロールしている時に見たかったビデオだった」

4)どんな曲が収録されているのか?

「『サワー』の成功の後、プレッシャーのせいで、本来してはいけないことをむしろしてしまった。デートするべきじゃない人とデートしてしまった」
「今作の多くは自分のそういう感情と対峙して、その幻想から脱出し、本当の自分は誰なのか、自分はどんな人間になりたいのか、どんな人と時間をともにしたいのか、を自覚することについて」

1曲目”all-american bitch”は、アコギのフィンガーピッキングに始まり、いきなりパワーコードが炸裂。歌詞ではFワードが早速登場(*アルバム全体では多用)。エモーションが炸裂する曲。

「私にとって音楽というのは、とりわけ女子として、なかなか外に出せないような、または社会が外に出すことを許してないと思えるような感情を表現すること」

”get him back!” はラップロック。復讐と復縁の両方を歌う。

”making the bed” はバラード。自分に当たり前の子供時代がなかったことを悲しみ、自分の決断を見つめる曲。

”teenage dream”は、『サワー』の後の強烈なプレッシャーの中から生まれた曲。メジャー、マイナーコードを行き来する。歌詞は、「みんなこれからよくなるから/あなたが成長すれば問題ないから/みんなこれからよくなるからって言うけど/もし私が成長しなかったらどうなるの?」

その他、弾けるベースラインに、パーティでの失敗をチャントし、そこからカタルシスあるスクリームをする曲。
ピアノのバラードに、自分らしくないことをやってしまう欠点を探求したり、ボーイフレンドが嫌がることを言ってしまうことに惹かれたり、
人を許すことの難しさなどについて歌った曲など。

5)その他の好きだと言ってきたアーティストなど
ライオット・ガールズ
2000年代初期のパンク・ロック
サッカー・マミー
ボーイジーニアス
スネイル・メイル
ジョニ・ミッチェル
キャスリーン・ハンナ
グウェン・ステファニー
デペッシュ・モード
ビリー・ジョエル
ビヨンセ
スリーター・キニー
サイモン&ガーファンクル
スウィート
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン

6)その他
サザン・カリフォルニア大学で、詩の授業を取っていた。
NYに引っ越しした。

7)怒り、悲しみの炸裂と、ポジティブで笑えること
オリヴィア・ロドリゴ待望の新作『ガッツ』は、女性視点のロックアルバム!  彼女をプレッシャーから救ってくれたのはジャック・ホワイトからの手紙。

”bad idea right?”のように、「彼女はすごく面白いし、すごくポジティブな人だから、遊び心のある曲もあることが大事だった」とDan。

“vampire”では、彼女がセレブであることを利用しようとした人について書くのを、当初はためらったそう。
だけど最終的には「作曲の意味って、自分の感情を最もシンプルにピュアに最も効果的な形にして表現することだと思った」

さらに『サワー』のツアーでも間違いなくハイライトだった”traitor”のパフォーマンスの時に、「すごく悲しくて、心の底で怒っている曲なのに、それを合唱している女の子の目から涙が流れているのを見て、彼女も怒っているのが分かった。つまり彼女が私が感じていることを同じように感じているのが分かって、それ以上にクールなことってないと思った」。
感情を共有することで人とつながりを持つことは、彼女が常に掲げてきた目標でもある。

2018年くらいから、今出て来て面白いと思えるロックバンドは、女性かクィアのロックだと言い続けて来たけど、個人的にも今年最高だったライブのひとつは、ボーイジーニアスだったし。ここにきて、キャスリーン・ハンナもセイント・ヴィンセントも言っているように、怖いもの知らずの彼女が、メインストリームでそれを証明してくれるような作品を作ってくれたみたいで死ぬほど楽しみだ!!



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