トム・ヨーク新バンド!10/04/09 その1

トム・ヨーク新バンド!10/04/09 その1

すいません!
何度も書き始めては、ライブに出かけなくてはいけなかったり気付いたらソファで寝ていたりして
アップが遅れておりました。
気分を巻き戻して今日こそは。


とにかくライブ会場の雰囲気が最初から違っていた。
来ている観客が自分達はいかに特別な場にいるのかという興奮で一杯なのだ。
緊張していたと言ってもいいくらい。
だから待っている間とにかくよく話しかけられた。というか、私に話しかけているというよりは
みんな気分が高まっていて、何か言わずにいらないという感じだ。
「すごいね。嬉しすぎる!」と独り言のようにみんな繰り返す。
私の前に座っていた男の子は、定価65ドルところ175ドル払ったという。
しかし中に入ってからそのチケットを売った人が
「罪の意識」と25ドル返してくれたのだそうだ(笑)。


そしてライブ開始。そんな観客は、緊張のあまり、または興奮のあまり、
トムが「これはダンス・アルバムだから踊ってくれたら嬉しい。映画を観るみたいに
座ってくれても構わないけど、でも出来たら立ち上がって欲しい」と
”Skip Divided"の前に言われるまで、がっつりと座ったままだった(笑)。
盛上がっていないのではもちろんまったくなく、
とにかくステージで何が起きているのかをじっくりと半ばショックで観入っていたという感じだったのだ。
そのトムの言葉にようやく観客も肩の力を抜いて解き放たれた。


突如行われたリハーサルに続き、トム・ヨークの新プロジェクトが初めて公に姿を現した
この日のライブ。セットリストはそのリハーサルとほぼ同じ。『イレイザー』全曲と、
トムのアコギによる新曲を含む数曲、再びバンドでレディへの曲を含む数曲、が演奏された。


1曲目、ピアノに座って”The Eraser"を途中立ち上がりながら全身で力一杯演奏したトム。
その瞬間から『イレイザー』には新たな生命として生まれ変わったようだった。
先にさすが宮嵜さんのブログに解説されているけど、正にその通り。
象徴としてのフリーのもたらした肉感性、と、解放、それがこの日のキーだった。
だから、というわけじゃないかもしれないけど、この日踊りまくっていたトムが
一瞬セクシーに思えた瞬間すらあったのだ!これまで一度もなかったのに(すいません!)。


アルバムの曲は、ナイジェル・ゴドリッチの打ち込みとギターによって、アルバムに近い
電子音のビートを残しながらも、この日のキーパーソンであった、ドラムのジョーイー・ワロンカーと、
そして、ベベル・ジルベルト、デヴィッド・バーンなどの作品に参加する民族楽器などパーカッションを演奏したマウロ・レフォスコにより、
曲は思い切りトライバル・サウンドに振られることもあったが、すべてが、簡単に電子ビートをオーガニック・サウンド、
流行のトライバル・ビートに
変えてみた、というようなものでもない。曲によっては、そうと言えることもあったが、むしろ、
すべてがより複雑に共存しあっている瞬間もあれば、または、思い切り、トライバルに振り切れている曲もあった。
つまり全体として観れば、これまでの枠組みからより自由自在に、大胆に、踏み外した演奏になっていた。
途中ジャム・セッション的なサウンドになだれこむこともあったが、思い切りオーガニックなものに聴こえるが、
しかし、それもしっかりと緻密にオーケストレイトされている感じだ。ただそういう自然挑発的に鳴らしたという空気感が
そこにはあったのだ。ライブが始まる前に流れていたのは、だからかジャズのライブ音源。チャールズ・ミンゲスだったのか
誰だったのかまではわかりませんでしたが。不勉強ですいません。


(続く)
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