Final Fantasy@Bell House

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すごく興味深いライブだった。ファイナル・ファンタジーの醍醐味と言えば、ステージでバイオリンを弾きながらその場でループし、フットペダルと自分のヴォーカルを使って、ひとりポリフォニック/チェンバー・”ポップ”を鳴らしてみせること。しかも、私がこれまでに観たほとんどのライブは、アーケード・ファイアやベイルートの前座で、彼らのライブにも参加しながら、ステージに10人はあげる彼らとは真逆のアプローチを取っていたというのがなんとも攻撃的な感じがしたのだ。そんな佇まいではないが。

それはポリフォニックスプリーのメンバーであるセント・ヴィンセントのひとりバンド(最近のツアーではメンバーがいるが)、アニマル・コレクティヴにおけるパンダ・ベアの活動と一緒に、去年かおととしのNYタイムスマガジンでも、オーケストラ・ポップ隆盛の中で、”ひとりバンドブーム”として紹介をされていたが、その代表格のオーウェン・パレットは確か、ひとりでパーフォマンスすること、そしてポップ・イディオムの中で曲を書くということに意味があるのだ、というようなことを言っていた。その制限こそが、自分を果てしなく自由にすると。

ただ、私が最後に観た彼のライブはそれとは様子が違っていた。実はここでも紹介したけど、グリズリー・ベアーも参加したイベントで、BAMというブルックリンのオペラハウスの企画によりオーケストラと共演することになっていたのだ。彼は、その日、まずバイオリンではなく、ピアノを演奏。ひとりではなく、何十人のオーケストラと共演。いつもの真逆で、「ピアノだし、コントロールフリークだから人と演奏するのは大変だ」と、四苦八苦していた。ちなみにこの両オーケストラ・アレンジを手伝っていたのが、NICO MUHLY。ヨンシーのソロを共作しているアーティスト。クラッシック畑の人で、ジュリアード卒。ビョークやアントニー&ジョンソンズなども早くから共演していた(かわいい顔)。

この日観たライブは、ある意味その延長線上だったと言えるかも。ライブでもキーボードを演奏。前日のライブで指をケガしたからと弾けない曲があったり、またしても、四苦八苦していたのだけど。キーボードをループ、サンプリングして、ヴォーカルを重ねた。ほとんどその場で新しい音を発明しながら、ひとりオーケストラのメンバーを増やしてみせているようなそのバンドの定義すら覆すその手法は以前と同じだけど、オーケストラとの共演なども含めた新たな制限が、彼らの今回の新たな挑戦となって、それが彼のポップ・イディオムをさらに大きな世界で成立させる原動力になったんじゃないのか、と思わせるような内容だったのだ。この日は、マウンテン・ゴーツとのツアー最終日。来年にはまたツアー開始する。

新作はアメリカでは1月12日発売。タイトルは”Heartland" で、ルイスという架空の農夫を主人公にした彼の独り語り。しかもその農夫は若くてめちゃくちゃ暴力的なのだという……。オーウェンとは真逆のキャラだ。どういうことなのか。楽しみだ。今作ではチェコ・オーケストラと共演!また、アーケード・ファイアのドラマー、ジェレミーと供に、ビョークが『メダラ』をレコーディングしたレイキャビックのスタジオを使い、NICO MUHLYなども参加して創ったのだそう。アニマル・コレクティヴの”SUNG TONGS" のプロデューサーが、ミックスを手がけたそうだ。すごいメンツでその気合いも感じられる。
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