新作『猫とアレルギー』を携えた、全国7公演のツーマンツアー。東京ファイナルはくるりとの対バンだ。先行のくるり・岸田は「たいへん光栄なのと同時に、なんで俺らが呼ばれたのか分からないまま来てしまったんですが」と冗談めかしながらも、コーラス隊入りのふくよかなサウンドで名曲連発。「昨日イントロが変わった」という新曲も披露された。
そしてきのこ帝国。4人でがっちりと奏でる、エモーショナルで奥深い轟音は本当に凄い。でも、彼女たちは痛ましい思いだけでなく、平穏で幸福な日々のかけがえのなさも、美しい轟音に乗せて歌うバンドになった。これがまた快挙なのである。普通、幸福は苦痛と違って、音楽で慰める必要がないからだ。
きのこ帝国にとって最大の武器は轟音そのものではなく、痛みも幸せもしっかりと受け止める感受性と、率直で嘘偽りのない表現力である。人肌の温かみに満ちた新曲群はどれも素晴らしかったし、来春のワンマンツアーでは更に磨かれて輝きを増してくるだろう。
一曲披露するたびに「ありがとう」と告げる佐藤千亜妃の姿も印象深かった。後日アップのライヴレポート書きます。(小池宏和)