"GOKURAKU"と銘打たれた、新作ツアーの延長線上にある武道館。始まるまでは、どんなライヴになるのかまったく見当が付かなかった。勢いと音圧で押し切るようなスタイルではないし、このサイズの会場でどんなふうにバンドの魅力を伝え切るのかが気掛かりだった。
ライヴのカギを握っていたのは、ニューアルバム『娑婆ラバ』の収録曲であった。十分なサウンドのスケール感をもって、ライヴに抑揚のダイナミズムをもたらし、オーディエンスを巻き込む。和洋折衷デザインの衣装で大胡田なつきが歌い踊り、あやかしの者のようなダンサーがアクロバティックに舞う。不思議なグルーヴが育まれていた。
その後はもう、必勝パターンに入っているとしか思えない展開だった。ポップとアヴァンギャルドの境界線上でもの凄い演奏とアレンジを披露しまくる。高度なポップミュージックが、ただじっくり鑑賞する目的ではなく、盛り上がって楽しむために鳴っていた。このポップマエストロ集団がシーンに登場したときと同じように、新しい感覚の武道館ライヴが登場した感じだ。
成田ハネダは、ひとつひとつが積み重なって今日のライヴが出来ている、とオーディエンスに感謝の言葉を伝えていたが、それはパスピエの音楽にも当てはまると思う。素晴らしいステージだった。後日アップのライヴレポート書きます。(小池宏和)