全米チャート10週連続で1位に。ザ・チェインスモーカーズが熱烈に支持されるのはなぜ?

全米チャート10週連続で1位に。ザ・チェインスモーカーズが熱烈に支持されるのはなぜ?

ザ・チェインスモーカーズのシングル“Closer feat. Halsey”が、ビルボード100のリリース3週目から12週目まで、10週連続でトップの座に君臨し続けている。チェインスモーカーズの片割れであるアンドリューと、ゲストに迎えられたホールジーによるデュエット曲であり、印象的な「間」で聴かせるトラックからグルーヴと深い情緒が立ち上るナンバーだ。

“Closer feat. Halsey”ミュージック・ビデオはこちらから。

ビデオのオチはともかく、ロマンチックな時間の中で永遠の若さを願う恋人たちの歌は、しかし刻一刻と流れる時間の残酷さから逃れることができない。音楽とは時間のアートであるということを、痛烈に思い知らされるポップ・ソングだ。

ニューヨーク出身のザ・チェインスモーカーズ(もう一人のメンバーはフランス系のアレックス)は、90年代末から21世紀にかけてのエレクトロ・ハウスやトランス、トラップなどからダイレクトに影響を受けてきた世代のグループだが、2014年初頭に公開した“♯Selfie”(MVの再生数は現在、4億6千万回を超える)で脚光を浴びた。好き放題に愚痴を零しながら自撮りに勤しむパーティー・ピープルの、リアルな姿を描写したナンバーだった。

“♯Selfie”ミュージック・ビデオはこちらから。

画面の中に次々と貼り付けられる無数の自意識は不気味だが、これこそ人間の本性であり、音楽は笑顔の背景もしくはツールにしか過ぎない、とするドライな視点にも頷ける。こんなふうに、チェインスモーカーズはその強烈な批評精神を作品へと落とし込むことによって、大きな支持基盤を培ってきたグループであった。

チェインスモーカーズの作品にはアップリフティングな楽曲も数多く存在するが、不思議と情緒的な楽曲の方が人気が高い。例えば、“Don’t Let Me Down feat. Daya”は、ファットなベースのループまでもが情緒を後押しする構造であり、剛腕で馴らしたW&Wやゾンボーイ(Zomboy)らでさえ、原曲の情緒に絡め取られたリミックスを生み出している。感情に強く訴えかける作曲術もまた、チェインスモーカーズの批評精神の賜物と言えるだろう。

“All We Know feat. Phoebe Ryan”の音源はこちらから。

“Don’t Let Me Down feat. Daya”や“Closer feat. Halsey”、最新シングル曲“All We Know feat. Phoebe Ryan”、そして未発表の新曲も収録されたチェインスモーカーズのニューEP『コラージュ』が、輸入盤や配信の形態で11月4日にリリースされる。トロピカル・ハウスやトラップ・ソウルとも共振する、今日に生み出されるべくして生み出されたスタイリッシュなエモーションの形が、そこには聴こえているはずだ。(小池宏和)
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