天安門事件や湾岸戦争を背景に1992年にリリースされたこのアルバム(原題『Amused To Death』)
競争や戦争をテレビで観ているという人類の状況は、
ローマ帝国が滅亡前にコロシアムで様々なエンターティンメントに興じていた時から進化していないのではないか……。
と、ロジャー・ウォーターズは今の視点から、新たにこの作品について語っている。
「残念ながら、当時、私がどうしても鳴らしたかった警鐘は、今でも有効なようだ。
しかも1992年と比べ、2015年を生きる人たちの苦境を解き明かすものとしてのほうが、より切実に聴こえるようにも思える」と。
安保関連法案の採決への強引な行程、抗日戦争勝利70周年の記念式典や軍事パレードなどが同時に報じられる今週のニュースを観ても、
痛切にロジャー・ウォーターズの言葉に共感する。
ジョン・ライドン先生とともにぜひ読んでほしい、ロッキング・オン10月の二大「脳を活性化させる」テキスト!
ちなみにオリジナル・ジャケットは、猿がテレビ画面を観ている構図だったが、
ニュー・ヴァージョンでは赤ちゃんがテレビ画面を観ている絵に変化している。
進化なのか退化なのかもまた考えさせられるところ。
(井上貴子)