アラン・ホワイト、逝去 ―― 半世紀にわたりイエスを牽引し、プログレにロックンロールのパワフルな突破力を持ち込んだ偉大なドラマーを偲んで

アラン・ホワイト、逝去 ―― 半世紀にわたりイエスを牽引し、プログレにロックンロールのパワフルな突破力を持ち込んだ偉大なドラマーを偲んで - rockin'on 2022年8月号 中面rockin'on 2022年8月号 中面

イエスのドラマー、アラン・ホワイトが亡くなった。5月26日、イエスに加入してまもなく満50年を迎えようとする矢先だった。バンドは9月の『危機』50周年記念ジャパンツアーの際、公演冒頭で彼へのトリビュート映像を流す予定だという。

英国ダラム州生まれのアランは、10代半ばから早熟な才能を発揮。セッションドラマーとして知られるようになった20歳(69年)の或る日、なんとジョン・レノン本人から電話をもらい、「明日、トロントでちょっとしたギグをやるんだけど、参加してくれないか?」とオファーされた。翌日アランは、大西洋を横断するジェット機の中でジョンやエリック・クラプトンらとリハーサルを重ね、2万人余りの大観衆の前でドラムを叩いた。

やがて71年には『イマジン』のメインドラマーを務めるに至る。ジョンは、リンゴ・スターにも通じるパワフルでファンキーなアランのスタイルを気に入ったようだし、当のリンゴも、アランを“もう一人のドラマーくん”と呼んで可愛がったそうだ。

その後、エディ・オフォード(イエスのエンジニア兼プロデューサー)との交友をきっかけに、何度かイエスのセッションに参加、72年7月に正式メンバーとして迎えられた。彼のドラミングは、バスドラやフロアタムなどを多用するパワフルなスタイルで、その突破力が凄い。加入後初のスタジオ作『海洋地形学の物語』(73年)の“儀式”での天空から轟く雷鳴のようなドラムソロは圧巻だ。続く『リレイヤー』(74年)の“錯乱の扉”や『究極』(77年)の“悟りの境地”なども強い印象を残す。

前任のビル・ブルーフォードはジャズ系テクニシャンで自らの達人性を主張する人だったが、アランは、スティーヴ・ハウやリック・ウェイクマンらの超絶ソロが躍動するためのダイナミズムを生み出すことに専念した。

数年前から体調を崩しがちで、ライブではジェイ・シェレンへの依存度が高まっていたものの、メンバー全員から深くリスペクトされていた。特に19年のツアー中、バンドは必ずアンコールの初めに“イマジン”を演奏し彼のキャリアを讃えた。誰からも愛されていたアラン、きっと天国ではクリス・スクワイアと毎日セッションを楽しんでいるに違いない。 (茂木信介)



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