レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、スタジアムツアー中に今年2枚目の新作リリースを発表! 「お互いへの愛と音楽の魔法」が生み出す新たな絶頂期は、いま始まったばかり

rockin'on 2022年10月号 中面

10年以上ぶりにジョン・フルシアンテを擁するレッド・ホット・チリ・ペッパーズの2022年が凄まじい。まず4月に発売されたジョンを迎えての新作『アンリミテッド・ラヴ』が、ジョンの脱退前に作った『ステイディアム・アーケイディアム』以来、バンドとしては16年ぶりにして2 度目の米チャート1位を獲得。しかもアナログは、1991年以来ロックバンドとしては最大の週間売り上げを記録という、なんとも幸先の良いジョン復活後のレッチリなのだ。

実は、彼らの最新ライブを8月17日にニュージャージー州のメットライフ・スタジアムで観たのだけど、これが本当にヤバかった。フリーが、今のバンドについて、「これがこのバンドの真の姿であり、最高の形」と言っていたけど、その意味がライブが始まった瞬間に分かった。ジョンが復活したことで、バンドが生き返っていた。みんなの体に新たな血液が流れているようだったし、4人の才能が均等に合体して完璧な円を作ったようなバンドとして最強の体制が整っていた。ジョンの復帰で感傷的になる瞬間はゼロで、むしろ未来のレッチリに向けての強靭な態勢で突き進んでいる感じだった。それを観たら、ジョシュ・クリングホッファーに辞めてもらうという悲痛な決断も、バンドが生き残りをかけた壮絶な判断だったのだろうと思った。

そしてそのスタジアムツアーの最中に、10月14日に今年2枚目のアルバム『リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』を発売すると発表したから驚愕。彼らは今のバンドのケミストリーが「夢のようで、お互いへの愛と音楽の魔法で」莫大な量の曲が出来てしまい、その完成度があまりに高いのでこの2枚目の発売となったと説明。今作は「俺達の全てであり、俺達が夢に描いていた姿。何もかもが詰まっていて、心臓の血から出来たもの」という。

しかし夢は夢でも、アルバムからの1曲目“ティッパ・マイ・タング”のMVではアンソニー・キーディスがアシッドを舌にのせるトリッピーな映像を公開したから彼ららしい。チャド・スミスは、「Pファンクで、ジョージ・クリントンで、ヘンドリックス」と説明していたけど、実際フリーとジョンのサウンドが溶け合うファンキーでサイケデリックな曲。《俺たちはまだ始まったばかり》と曲の中でも告げているが、新たな作品で生き返ったレッチリのさらにディープな新章がどう展開していくのか楽しみだ。 (中村明美)



レッド・ホット・チリ・ペッパーズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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