11月末に突如報じられた最新アルバム『72シーズンズ』(2023年4月14日発売予定)のニュースは、世界各地のSNSで瞬く間にトレンド入りし、メタリカの存在感の凄さを示した。この熱烈な反応は先行シングル“ルクス・エテルナ”の良さによるところも大きいだろう。
伝統的なメタルからは長く離れていた音楽性が、1stアルバムの頃に回帰し、ルーツであるNWOBHM(ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)の要素が過去最大級に滲み出ている。NWOBHMは、70年代ハードロックをパンク以降の激しさ基準で更新しプログレッシブロックの構築美を加えた、ある意味でポストパンクにも通じる奥深いジャンルで、現代のメタルシーンでは若いバンド(Eternal ChampionやSonjaなど)が優れた再解釈を進めている。
年季の入ったメタルファンからはダイアモンド・ヘッドやスウィート・サヴェージのようなNWOBHMバンドが引き合いに出されている“ルクス・エテルナ”は、そうしたルーツ回帰と現行シーンへの対応を同時に成し遂げた。メタルの歴史を踏まえつつ先の一手を打ち続けてきたメタリカの面目躍如といえる楽曲だ。
フロントマンであるジェイムズ・ヘットフィールドは、アルバムのタイトルについてこう言っている。「“72の季節”というのは、ひとの人生の最初の18年間、つまり“本当の自分”や“偽りの自分”を形作っていく年月のことを指している」「大人になってから俺たちが経験することの多くは、こうした子供時代の体験の再現であったり反応だったりするんだよ。子供時代という檻の囚人であり続けるか、あるいはそういった束縛から自らを解き放つかってことだね」。
“ルクス・エテルナ”のルーツ回帰的な音楽性やあらゆる世代の団結をうたう歌詞は、こうしたテーマにそのまま対応する。他の収録曲も、これと同様に、または異なる角度から、素晴らしい表現力を発揮してくれるものになっているだろう。ニューアルバムに伴う活発なツアーの計画も既に発表されている。来日公演は2013年からご無沙汰になっているが、今度こそ実現してほしい。 (和田信一郎)
メタリカの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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