ロッキング・オン最新号、表紙巻頭は『新世代バンド2023』! ポストコロナの音楽シーンが今、動き出す! 激動の音楽シーンの最前線を走る若き精鋭バンドを総力特集

ロッキング・オン最新号、表紙巻頭は『新世代バンド2023』! ポストコロナの音楽シーンが今、動き出す! 激動の音楽シーンの最前線を走る若き精鋭バンドを総力特集 - rockin'on 2023年7月号 中面rockin'on 2023年7月号 中面

ロックの復活、あるいはバンドシーンの復興というトピックは、2020年代以降しばしば語られてきた。ロッキング・オンでも昨年4月号で「ポスト・コロナ時代を駆け抜ける次世代型ロック・バンド12組」、5月号で「ロック復活の2022年」とそれぞれ題した特集を組んでいる。もちろんロックバンドが復活してほしいという願いを託した特集でもあったわけだが、そんな願望を既に追い抜いて新世代バンドシーンが加速しつつあるのが、この2023年なのだ。

それにしても新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の危機に見舞われながらも、バンドが復活へと向かったのは改めて凄いことだと思う。レコードショップが閉まり、ライブハウスが潰れ、フェスが中止に追い込まれ、ポップミュージックが丸ごと沈みかけたあの時期、とりわけネガティブな影響を受けると想定されたのがバンドミュージックだった。何故ならそれはセールスのフィジカル比率が高く、ライブツアーを活動の生命線とし、「人が集まって作る」ことを前提としたフォーマットだったからだ。それでなくても長年の不振に喘いでいたバンドミュージックが、ロックが、パンデミックによって致命傷を負うのは不可避にも思えた。

しかし、特筆すべきは当事者たるバンド、とりわけ若いZ世代のバンドたちが驚くほど楽観的であったということだろう。彼らはパンデミックを外界に邪魔されず創作に集中できる時間として捉え、物理的な制約をものともせず次々に素晴らしい作品を作り上げていった。ライブシーンは復活すると確信し、リスナーのライブへの渇望はバンドにとって必ず大きなアドバンテージになると信じていた。当時、彼らにインタビューするたびに、むしろこちらが励まされたような気持ちになったのを記憶している。

そう、彼らは正しかった。ライブシーンの復活と共に彼らは世界に飛び出し、地元のベニューで若いオーディエンスを熱狂させ始めた。3年ぶりの来日ラッシュに沸く日本でもレッド・ホット・チリ・ペッパーズのドーム公演や、アリーナツアーを全日程ソールドアウトさせたThe 1975、さらにはデビュー間もない新人バンドの初来日公演まで人で溢れかえり、その熱気の中でポストコロナを身をもって実感できた人も多かったはずだ。

そんなライブで、アルバムで、新世代のロックバンドのサウンドに触れるたびに感じるのは、ロックがこれほどまでに「自由」になったのは本当に久しぶりだということだ。ロックがポップミュージックのニッチとして延命する道を探っていた近過去の息苦しさが嘘のように、最新のロックバンドは好き勝手な方向に独自の道を切り開きつつある。だからこそ、現在のバンドの活況にムーブメントとして名前を与えることは不可能だ。ムーブメントとして括られることがないからこそ、彼らの自由は担保されているのだから。

その結果、新世代バンドたちが拡大を図ってきた2023年のバンド地図には、恥知らずなほどのポップな売れ線狙いも、自分たち以外の誰の機嫌も取らない超絶アバンギャルドも、当たり前に隣り合うユニークな状況が生まれた。そのカオスなバラエティは本特集で取り上げたバンドの顔ぶれからも明らかだろう。マネスキンのように世界に発見されるや否やメインストリームのリスナーを鷲掴みにする規格外のバンドもいれば、ブラック・カントリー・ニュー・ロードウェット・レッグのように、オルタナティブなまま拡大と進撃を続けるバンドもいる。圧倒的なR&B、ヒップホップの優勢の中で、2010年代後半には瀕死の状態に陥ったUSオルタナティブもようやく息を吹き返しつつあり、ボーイジーニアスのような2020年代に相応しい「スーパーグループ」のあり方も提示された。

自由と多様性をバンドにもたらした新世代をサウンドで括ることは不可能だが、彼らのマインドセットにはある一定の共通感覚が見て取れる。例えばそれは、グランジやシューゲイズといった旧来のオルタナティブを自分流に着こなすセンスや、過去に囚われ過ぎることのない軽やかさであり、同時にオリジナルに宿っていたスピリットを学び、内在化させていく素直さでもある。ひと世代前のシニカルなそれとは違い、彼らはロックバンドであることを恐れない。《ロックンロールなんてクソだと言うクール・キッズ、でも俺たちはクール・キッズよりクールだ》(“クール・キッズ”)と歌うマネスキンのように。

もうすぐ、また暑い夏が巡ってくる2023年。その前にあなたをさらに熱くするバンドを見つけてください。(粉川しの)




新世代バンドの総力特集は、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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