9月15日に世界同時発売となるミツキの7作目『ザ・ランド・イズ・インホスピタブル・アンド・ソー・アー・ウィ』からファーストシングル“Bug Like an Angel”が解禁された時に、この作品が彼女のキャリアの中でも別次元に行くものであることを確信したけど、全曲聴いたら、その想像を遥かに超えるもので驚愕した。ミツキの新宇宙とでも言いたくなるような壮大な未知の世界の扉がいくつも開いた作品だったから。
追加で解禁された2曲“Heaven”と“Star”についてミツキがBBC 1で語っていた。「この2曲では、このアルバムにいかに様々な面があるかを紹介したかった」。“Bug Like an Angel”はアコギ主体だが、“Star”は、いきなり宇宙の彼方に飛んで行ったかのようなストリングスによるディズニーのサントラのような夢心地の曲。「オーケストラは、ロサンゼルスでレコーディングしたのだけど、演奏してくれたのは、実際ディズニーのサントラで演奏しているような人達だった。でも、同じ曲のバンドとボーカルはナッシュビルでレコーディングした。優れたナッシュビルのバンドを起用したかったから」。普通は相容れない2要素を共存させ、曲の中で爆発を起こしているのも今作の特徴だ。
歌詞においては、“Bug〜”ではコップの底を見つめながら、自分の精神のどん底を吐き出しているが、“Heaven”ではミツキ曰く「古典的ロマンチックな曲で、自分が愛する人と一緒にいる短い時間を大切にすることについて」。今作の彼女は、いつも以上に“虫けら”から“天国”まで両極端を激しく行き来しながら、これまで通りこの世界で自分の居場所を探求している。それを、エンリオ・モリコーネのマカロニウエスタンから、映画『ファーゴ』の凍りつくような世界観、アーサー・ラッセル的な親密性から、カエターノ・ヴェローゾ、カントリー、日本の童謡にも聴こえるような曲まで壮大なサウンドの中で描いている。
ただ今作が、過去の作品と違う感触なのは、その根底でとうとう愛を受け入れたかのような心の平穏が垣間見られることだ。だから、ここまでかっ飛んでいながらも、一番心に入ってきやすい作品にすらなっている。
ちなみに朗報がある。このミツキのキャリア最高峰と言える作品を発売日前日9月14日に世界一斉開催のリスニングパーティで聴ける。日本はなんと今作に完璧な場所コスモプラネタリウム渋谷。お見逃しなく! (中村明美)
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