6年ぶりの来日公演の只中にある今、満を持してコールドプレイのオールキャリアを振り返る表紙巻頭特集をお届けする。
長らく続くポップとシンガーソングライターの時代、ロックバンドの居場所がシュリンクし続ける中で、なぜコールドプレイだけが拡大に転じることができたのか。25年前、繊細な美を紡ぐインディーロックバンドとして登場した彼らは、なぜ極めて大衆的なエレメンツから極めて前衛的なエレメンツまでスムーズに吸収し、そこに一切の摩擦を生まぬまま至高のポップを鳴らす、現代最強のロックバンドとなりえたのか。シンプルな4ピースの演奏の肉体性を保ちながら、なぜ音と光と色が空高く舞い躍るスペクタクルを繰り広げ、スタジアムコンサートの可能性を押し広げることができたのか。
その謎を解き明かすのが今回の特集だ。
彼らが培ってきたその桁外れなポピュラリティと包括性は、従来型のロックバンドのナラティブでは語りきれないものであり、特に2010年代はロックシーンにおいてコールドプレイを位置づけることが難しい時代だった。彼らの巨大な成功から目を逸らすしかなかったシーンの偏狭こそが、あの時期のギターロックの低迷を象徴していたとも言える。
しかし、時代は変わった。オリヴィア・ロドリゴのようなアーティストが登場し、ギターミュージックがメインストリームに再び居場所を見つけた今、10年以上前からずっとそこにいたコールドプレイの真の価値が再び輝き始めている。彼らが今最もストリーミングされ、万人に最も聴かれているバンドとなったのも当然なのだ。
東京ドーム2日間を即完させた今回の来日は、日本における彼らの過去最大のパフォーマンスとなるが、600万人以上の観客動員を予定する「ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ・ワールドツアー」は、バンドにとっても過去最大の規模だ。最新作『ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ』のテーマである「宇宙」を文字通りスタジアムに出現させ、未知の生物との相互理解を訴え、愛を、希望を、平和を真顔で訴えかける今回のライブは、ロックバンドとしても、ポストモダンを擦り続けてきたポップミュージックとしても、信じられないほど無防備かつナイーブなものでもある。
しかし、そこで自分の五感が全解放されていく感覚を、そこに注ぎ込まれるむせかえるような多幸感を一度でも味わった者ならば、彼らがかくも無防備でナイーブでいられる「強さ」を知っているはずだ。
(粉川しの)
<コンテンツ紹介>
■「ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ・ワールドツアー」最新レポート
■ バンドの現在地を語った最新インタビュー&バンドの転換点に迫った16年インタビュー
■ デビューからここまでの歩みを辿るコールドプレイ全史
■ スタジオアルバム全9作完全ディスコグラフィー
コールドプレイの表紙巻頭特集は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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