テイラー・スウィフトが見せた素顔 ―― 『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント: ジ・アンソロジー』で何を打ち明けたのか?

テイラー・スウィフトが見せた素顔 ―― 『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント: ジ・アンソロジー』で何を打ち明けたのか? - rockin'on 2024年7月号 中面rockin'on 2024年7月号 中面

現在発売中のロッキング・オン7月号では、巻頭特集『ビヨンセテイラー・スウィフトビリー・アイリッシュ』の中で、テイラー・スウィフトの新作『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント:ジ・アンソロジー』の全曲解説を掲載しています。本原稿の一部をご紹介。


最新アルバム『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント:ジ・アンソロジー』全曲解説

文=粉川しの

グラミー賞授賞式でのサプライズ告知から始まった、テイラー・スウィフトの最新アルバム、『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』の「旋風」とでも呼ぶべきものは、リリースから約1ヶ月が経った今なお、まったく衰える気配がない。4週連続全米1位etc.のセールス面での破格の成功はもちろんのこと、本作がこれほど世間を騒がせるものとなったのは、テイラーが最終的に31曲まで拡張された中でぶちまけた、事象のインパクトに依るところが大きいだろう。

彼女自身が「カタルシスの産物」であると評しているように、本作はどこまでも感情的なアルバムで、テイラーが公私の両方において怒り、哀しみ、憤り、妄執、孤独……といったタフな感情に翻弄された日々が、未だ傷口から血を流したままの状態で、そっくり封じ込められているのだ。

この全曲解説では、彼女が各曲で「何を歌っているのか」を紐解いていく。公私ともに波瀾万丈だった「THE ERAS TOUR」前後の経験をベースにしたナンバーの多くは、ひとりの女性の失恋と喪失の物語であり、稀代のポップスターの痛みを伴う自己批評だ。その上で、何故テイラーはそれらを「歌わなければならなかったのか」を考えていきたい。何故、彼女は未だ癒えない傷口を抉るようなことをするのか。テイラー・スウィフトという表現者の背負った宿命が、そこに垣間見えるはずだ。

Fortnight
ポスト・マローンをゲストに迎え、本作の基調が80sの影響を多分に含んだエレクトロポップ、シンセポップであることを端的に伝えるナンバー。

エレポップとは言っても、カラフルでアッパーな『1989』や、『レピュテーション』で披露した重厚なインダストリアル調とは異なり、今回は本曲を筆頭に抑制されたミッドテンポのバラードが中心。『フォークロア』を経たテイラーらしいクラフト感だと思うし、シンセのダウナーなベースラインに乗ってのデュエットも大スターの共演という派手さはなく、ポスティの声がテイラーの声の残影のように響くという、ミニマルながら哀しみの深部に浸透する設計が見事。

彼女は本作のテーマについて、「運命論的で、センセーショナルかつ哀しみに満ちた瞬間に感じたことを反映したもの」だと語り、《あなたを愛している、それで人生が滅茶苦茶になった》と歌う本曲を、そのテーマを象徴するナンバーとして挙げていた。MVには映画『いまを生きる(原題は“Dead Poets Society”)』で共演したイーサン・ホークとジョシュ・チャールズが出演、アルバムタイトルのオマージュを担っている。(以下、本誌記事へ続く)



テイラー・スウィフトの記事の続きは、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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