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    フジロック2025のラインナップはこうして決まった! 超大御所から気鋭の新人まで揃えた絶妙なラインナップ、注目アクトを主催者に訊いた

    ●初日はオーケー・ゴーも嬉しいです。


    「たまにやりとりしているエージェントから『オーケー・ゴー、どう?』って話がポーンと来て、『いいね、懐かしいね!』って(笑)。ザ・ハイヴスもそうですね。向こうからいきなり話が来て、動くんであれば、ぜひフジで見せたいなと」

    ●00年代の人たちがベテランとして戻ってくる感じですよね。

    「最近は若手のバンドが00年代風のオルタナティブロックをやっているし、20年経つと循環するのかなって」

    ●逆に言えば、今年の海外勢では大ベテラン、レジェンド級のアーティストはいないですよね。日本の山下達郎さんくらいで。それもラインナップが若い印象になっているんですけど。

    「多分、今年はVaundySuchmosCreepy NutsRADWIMPS羊文学といった邦楽マーケットでも大きいアーティストたちを、第1弾で一気に発表したというのも大きいかもしれないですね。そこにフレッド・アゲインのような海外アクトの発表も重なって、そうしたイメージになっているのかなと」

    ●そもそも、第1弾で60組を一挙に発表したのは、どのような意図があってのことだったんですか?

    「通年は、2月の上旬くらいに第1弾を発表していたんですよ。そこでまずは海外勢のみ発表して、3月に邦楽を含めての第2弾、というのが基本パターンで。そんな中で、洋楽を最初に発表して、もちろん反響はあるんですけど、『このアーティストは土曜なの? 日曜なの?』っていうお客さんの声が多くて。『やっぱり日割りが出てから(チケットを)買おうか』という話になりがちで」

    ●宿の問題もありますしね。

    「そうなんです。早々に発表して、お客さんも観たいと思ってくれるんだけれど、『で、いつなの?』っていう。結局、日割りが出るまで買うのを待ってしまう。日程がわからないと予定が組めないですから。なので今回(の一挙発表)はお客さん目線で、もっと予定が組みやすいように、チケットを買いやすいように、ということを考えた結果でした」

    ●その変化は凄く感じました。

    「SNSの書き込みなどを見ていても、今年は若い人が結構反応してくれている、というのも感じますね。この発表の仕方はアリだったな、って改めて思います」

    ●土曜日はバリー・キャント・スウィムも注目ですね。これは観たい。

    「バリー・キャント・スウィムは昨年新人としてクローズアップされたアーティストで、深夜枠でどうだろう、みたいな話もあったんですけど、向こうの押しが新人にしてはだいぶ強気で、予算が合わず(笑)。でも今年は今さらBBC Sound Of 2025で入賞したりと、やはり反響は大きかったので、やっと呼ぶことができました。ライブセットで来てくれるといいんですけど」

    ●注目の若手ではイングリッシュ・ティーチャーやニューダッドも。

    「うん、僕が自信を持って推せる新人はブッキングできたと思います。去年で言うとラスト・ディナー・パーティーもそういうバンドでした。今年の土曜日では、コンフィデンス・マンにも注目してほしいですね。ピコピコで楽しいライブになると思います(笑)。あと、フェイ・ウェブスターもフジは初めて出てくれます」

    ●パッと見ると、いわゆるギターバンドらしいギターバンドが金・土は控えめなんですよね。

    「そう、その代わり、ヴァンパイア・ウィークエンド、ハイムが揃った日曜日がそういう日になっています。毎年こういう日は必ずある、わかりやすい、もう一つのフジロックらしさですよね。ハイムは3月に新曲が出て、ニューアルバムも制作中とのことで、最高のタイミングで久々に来てくれます。あと最終日は、邦楽が目立ちますよね。ROCK IN JAPAN FESTIVALに行っているような人たちも『おっ?』って思うようなラインナップじゃないかと。フジって結局、最後のステージ割りが出た段階で『なるほどね』と、納得してもらえるものになるっていう」

    ●あと最終日は、これは超個人的ですが、今年一番楽しみな初来日ニューカマーはロイエル・オーティスです。


    「ですよね。 僕もオススメは?と訊かれたらロイエル・オーティスと答えます。インディーギターのニューカマーをフォローしている人たちには、『いいセレクトしているな』と思ってもらえるんじゃないかと。彼らが出演するステージの流れも最高なので、期待していてほしいですね」

    ●最終日はグレース・バウワーズ&ザ・ホッジ・ポッジも楽しみです。10代の天才ギタリスト。

    「これは社長の佐潟が『ぜひやりたい!』と決めた人です。よく知らなくても、プレイを観たら凄いのが分かるっていうタイプのアーティストですね。同じ系統だと、SNSでも盛り上がっていたエムドゥ・モクター。あと、初日のマーシンも、ポーランドの凄いギタリストです」

    ●こうして見ると、テクニック系の人が多いですね。

    「ヴルフペックしかり、技巧派が揃っていますよね。これもフジらしいセレクションだなと。一組一組をバラして見ていくと、どれもが皆が知っているアーティストというわけではないですけど、音好きの人たちには刺さるアーティストが多い、面白い第1弾になったなと」

    ●今年に関しては誰もが知る超ビッグネームはいないと思うんですが、その代わり、総合力というか、全てが噛み合った時の満足感が高いラインナップだと思いました。

    「うん、うまい組み合わせで発表できたのではないかと思います。洋楽が多い、邦楽が少ないとかいうことでもないですし、各ジャンルのバランスがいいと言うか」

    ●今年の第1弾で一斉に発表する方法や、ラインナップの組み方は、今後のフジロックに受け継がれていくんでしょうか

    「どうでしょう、ある程度はそうなるんじゃないかと思いつつ……でも、うちの会社は天邪鬼なので、また変わるかもしれないです。一番わかりやすい例が、98年に豊洲で大成功したのに、えっ、次の年には動くんかい!って(笑)。僕はその年に会社に入ったんですけど『なんで動くの?!』って(笑)。でも苗場に行って初めて、ああ、これがやりたいことだったんだ、って理解できたという」

    ●フェスをめぐる環境はコロナで大きく変わり、コロナ後のインフレやトレンドを受けて再び大きく変わりつつありますが、そうした激動期にあって、フジの今後のビジョンをどう考えていますか?

    「一つ、フジロックの軸としてあるのは、僕らは売れればなんでもいいよ、というようなブッキングはしないということですね。時代の変化の中でも、その主催者としての軸はずっと変わっていないんです。その軸は守りつつ、アーティストにも、お客さんにも『フジなら行くよ』と思ってもらえるようなフェスを、色々改革しながら作っていきたいです」

    ※取材は2025/3/6に実施されました。


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