ジェイク・バグ、その才能は別格だった
2013.05.09 21:32
かなり期待はしていたが、それを上回る衝撃的なライヴだった。
そもそもアコギ1本の生音と、生身の声のみで1時間強、1秒たりとも飽きさせずにライヴできるアーティストはなかなかいない。
歌もギターも、予想をはるかに超えて上手すぎる、というのももちろんあるが、やはり彼の書く曲のクオリティは抜群なのだ。
トラッドでフォークな曲なわけで、普段だったらそういう渋い曲をそのまま渋く終わらせたがるものだが、そうじゃなくて、わりとベタにブリッジをビルドアップしたり、逆にベタにセンチメンタルになったりと、普通だったら当然すぎて避けるようなものをあっさりやってのけるのだ、ジェイク・バグは。
これは若さだけに片付けられないはず。
しかも、それが決してベタに聴こえず、すごく説得力をもってやり遂げてしまうから、ほんとに並大抵じゃない才能を感じてしまう。
新曲3曲もまさにそれを象徴しているような曲で、イントロはたとえばニック・ドレイクぽかったり、ディランぽかったりするんだけど、あっという間にたまらない珠玉のポップ・ソングに昇華しちゃうところが強烈だった。
ステージ上の彼も、「うん、みんな静かだな、スマイルしたら? うん、自分はスマイルしないよ。これ、シリアスなショウやろうとしているから(ニヤリ)」みたいな感じで、自分が女性だったらたまらなかっただろう“はにかみっぷり”を発揮。
いや、男でもグッと来た。
この人、絶対にビッグになるはず。
ていうか、ビッグになってもらわなければ困る。
アンコール1曲目はアルバムの中でも際立つ名バラードの“ブロークン”。
「ここで君を待ってるよ、俺は挫けてしまったから」と歌い上げる少年を見上げていて、思わず涙が出てきそうだった。
いや、マジで。(内田亮)