ファーザー・ジョン・ミスティの新作「ピュア・コメディ」は音も素晴らしいけど、自筆のライナーノーツが凄い

ファーザー・ジョン・ミスティの新作「ピュア・コメディ」は音も素晴らしいけど、自筆のライナーノーツが凄い
こんな自筆のライナーノーツを読んだことがない。
それは質に於いても、量に於いても前代未聞、きっとこれからもこれを超えるものは出て来ないだろう。音楽評論家歴ほぼ50年の僕が言うのだから間違いない。
その長文のライナーノーツに書かれているのは、現在の世界に対する彼の見解。
物凄く単純化してしまうと、二つの大きな思想の流れが世界を覆っているという認識。
ひとつはナショナリズム。ひとつはグローバリズム。まあ多くの人が言う世界観ではあるけれど、彼はこの二つの思想が結局、その支持者自身を疎外し抑圧していく構造を分析していく。
ナショナリズムが低所得者を、グローバリズムが知識層をまず最初の犠牲者として選択するアイロニカルな状況を明らかにしていく。
彼はそのどちらの思想にも組みしないとも書いている。
凄いのは、こうした論理的明晰さをもちながら、ある意味論理とは同居しずらい歌という表現に向かい、素晴らしい作品を作り上げたことだ。そしてもっと凄いのが、理屈っぽくない抽象的な世界ではなく、明晰な分析を踏まえた上での、歌にしかならないエモーションを見事に表現しているところだ。今夜のワールド・ロック・ナウでライナーノーツを含め、しっかり紹介したい。
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