ビリー・アイリッシュのライブで感じる安心感のようなもの、それは彼女の音楽やパフォーマンスが生み出す距離感によるものだ。彼女の、囁きや呟きのような声の距離感、ライブでの観客との距離感、お兄ちゃんとの距離感、家族との距離感、それらすべてが──イメージとしては1.5mぐらいに──いつも一定に保たれている。平等に、正確に保たれている。その距離感において巨大な愛とフラストレーションを表現するところにビリーの天才性はあるし、そのコミュニケーション方法こそが現代的だったから世界でNO1になったのだ。
4年前、客の少ないサマソニのソニックステージで観たときも、今回ラッキーでいいチケットが買えて間近で観ても、そのコミュニケーションのあり方は何にも変わっていなかった。1.5mに距離を定めてそこにすべてのの感情を放つビリーの表現は、どこまでも直接的なメッセージとして巨大なスケールで届いていた。
こんな事ができるアーティストはビリー・アイリッシュしかいない。素晴らしいライブだった。(山崎洋一郎)