ワイルド・ナッシングの新作『INDIGO』は、見える景色がガラリと変わる「攻めのポップ作」だ


8月31日にリリースされたワイルド・ナッシング通算4作目のアルバム『INDIGO』を、このところ繰り返し聴いている。2010年代にドリームポップ正統派として脚光を浴び、着実にソングライティングの奥行きを増してきたジャック・テイタムだが、今作では夢見心地な感触を残しながらも、何か決定的に作風を変えてきている。まずは、MVが公開された“Letting Go”を。


音の立ち方も、メロディも、パキッと「醒めている」。よりオープンな場所を目指そうとする歌詞にも驚かされた。聴いているこちら側に、心地よい目覚めを促してくる響きだ。まどろみや夢想の中でメロディを紡いでいるというより、ベクトルが夢から現実に向かっているこの感じ。作曲段階からして、以前とは姿勢が違う。

パッと聴いて、真新しいサウンドには思えないかもしれない。懐かしの80’sギター・ポップのように聴こえるかもしれない。しかし、ギター・バンドも音を鳴らす明確な目的ひとつでこうも見えてくる景色が違うのだということを、端的に示しているアルバムだ。ロック・シーンが今日の閉塞感/頭打ち感から抜け出すひとつの手がかりのようなものが、この作品には詰まっている。オーディオ・ビデオもいくつか公開されているので、ぜひチェックしてみてほしい。(小池宏和)



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