バンド結成50周年を今年迎えているレッド・ツェッペリン。3月に再発された『伝説のライヴ-HOW THE WEST WAS WON-』に続いて、今回リマスタリング再発されるのが『永遠の詩(狂熱のライヴ)』だ。ツェッペリンというとリマスタリングという印象がここ数年ついていると思うが、2014年以来続いてきたツェッペリンのカタログのリマスタリングは、今回の『永遠の詩(狂熱のライヴ)』で締め括りとなる。
しかし、振り返ってみるとツェッペリンのカタログは常にリマスタリングされ続けてきている印象もまたある。80年代にカタログがCD化された際にはアナログのマスター音源をそのままデジタル化していただけだったので、まずは1990年にジミー・ペイジが監修するリマスタリング音源によるコンピレーションがリリースされ、オリジナル・アルバムについては1993年にすべてリマスタリングされ直されることになった。その後、『BBCライヴ』、『伝説のライヴ』などの重要なライヴ音源の発掘の後、07年にリマスタリングされたのがこの『永遠の詩(狂熱のライヴ)』だった。
この07年の『永遠の詩(狂熱のライヴ)』の再発は、当時としてはかなり画期的なものだった。もともとドキュメンタリー映画『レッド・ツェッペリン 狂熱のライヴ』のサントラ盤として1976年にリリースされていた『永遠の詩(狂熱のライヴ)』は、73年のニューヨーク公演のライヴ音源を聴きやすく構成し、編集もし直した音源だった。しかし、07年の再発の時には73年のニューヨーク公演の全容を限りなく忠実に再現する音源として改められ、作り直されたからだ。
76年版の『永遠の詩(狂熱のライヴ)』は2003年に『伝説のライヴ』がリリースされるまでは長い間、唯一のオフィシャルの、ライヴ会場の音源として聴かれ続けてきたが、その反面、かなり乱暴な記録としても評されてきてもいた。それが07年の再発を境に、『永遠の詩(狂熱のライヴ)』は黄金期のツェッペリンのライヴの内実を伝える重要な音源へと様変わりしたのだ。
その一方で、映画『狂熱のライヴ』の方は構成などに手を入れられることはなく、ただ07年版『永遠の詩(狂熱のライヴ)』用にミックスとリマスタリングをやり直した音源をベースに、76年版の映画の音源に準じて編集し直し、音源のみを新しく差し替えたものになっていた。
今回、リリースされるものは基本的に07年に作り直した内容と変わっていないが、ジミー・ペイジがすべて音源をリマスタリングし直したものになっている。一体、なぜジミーはそこまでリマスタリングにこだわるのかというと、デジタル・オーディオのテクノロジーが年々向上しているのに合わせて、アナログ音源のマスターの音へと極力近づけることを目指しているからだ。特に、PCや携帯機器で聴くデジタル音源の音質をどうにかしたいと、とジミーは2014年に今回のリマスタリング・シリーズを始めていく際に語っていた。
ある意味でその努力が最も実を結んでいるのが今回の『永遠の詩(狂熱のライヴ)』で、シンバルとバスドラム、ギターとベースなどがそれぞれに明確な音となりつつもひとつの塊となった音像となっていて、歴代の『永遠の詩(狂熱のライヴ)』の中では最も聴き応えのある音になっている。
なお、これまでこうしたリリースはなんかしらの新音源のリリースと連動することも多く、ジミーは新しいライヴ音源のリリースについて今年の初頭にほのめかしていたので、それが実現すればこれ以上に嬉しいことはない。 (高見展)
9月7日(金)にリリースとなった『永遠の詩(狂熱のライヴ)』リマスタリングの詳細は以下の記事より。
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