ギター1本の完全ソロ弾き語りで東京ドームを制した、エド・シーランの事件的ライブをついに観た!

ギター1本の完全ソロ弾き語りで東京ドームを制した、エド・シーランの事件的ライブをついに観た! - pic by Teppei Kishidapic by Teppei Kishida

まさに事件的な一夜となった、エド・シーラン初の東京ドーム公演だった。ソールドアウトとなった会場には5万数千人が詰めかけ、5万数千人がギター片手に歌うたったひとりの男を息を殺して見守り、その歌に酔いしれ、現在進行形で曲を生み出していくマジカルなループに興奮し、そして共に大声で歌った、前代未聞の2時間だった。そこにはドーム公演のお約束のレーザービームの演出もなければ、スモークやパイロのような特効が仕掛けられるタイミングも一切なかった。ステージは控えめなライティングで照らされてほんのりと浮かび上がり、そしてステージ上には本当に何もなかった。小さなひな壇にひとり、エド・シーランがギターを抱えて立っていた。

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昨年の武道館&大阪城ホールでのアリーナ・ツアーに続き、今回の東京ドーム&京セラドームの2デイズは、『÷(ディバイド)』を引っさげてのワールド・スタジアム・ツアーとしての来日だ。もちろんエドにとって過去最大の来日であり、初めて日本で彼の「世界標準」のスケールを体験できた記念すべき公演でもあった。そう、エドはギター1本での完全ソロ弾き語りで数万人と対峙するという異次元のフォーマットを常態にして久しいアーティストであり、彼はまるでキャパ数百のライブハウスで歌うような自然体でドームのだだっ広いステージで歌う。冒頭、何の合図もSEもないままふらっとステージに登場したエドには「リハーサルか!」と突っ込みたくなってしまったが、その直後に鳴った“Castle On The Hill”は、瞬く間にドームの天辺まで駆け上っていくのだ。

いずれにしても初の東京ドーム公演ということで、初めてエド・シーランのライブを観るオーディエンスも多かったはず。そんな初見のオーディエンスを想定してか、「僕はご覧の通りひとりだけれど、このループ・ペダルを使って音を重ねていくんだ。プレイしながらその場でループさせるんだよ」と、カメラに向かって丁寧に説明するエド。そしてループ・ペダル使いが最も分かりやすい曲のひとつである“Eraser”へ。ひな壇でギター・リフをループさせっぱなしにするやいなやピョン!と下段に飛び降りて、右に左にと駆けずり回りながらラップをまくし立てるエネルギッシュなプレイだ。

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巨大なスクリーン映像以外にはとにかく何もギミックがなかったこの日のステージだが、“The A Team”ではぐるっとエドを取り囲むようにスタンド席で数万のスマホのライトが瞬き、別世界の美しい光景を生み出していく。そう、彼のライブにおいてはオーディエンスもまた重要な役割を担っているのだ。

ちなみに日本のオーディエンスは世界各国のオーディエンスと比較すれば極端に控えめだし、合唱のボリュームもそこまで大きくないわけだが、エドはそんな日本特有のライブ鑑賞マナーを「どんな曲も真剣に聴いてくれて嬉しい」とポジティブに捉えている人だ。そしてそんな日本のオーディエンスの性質が生んだミラクルが“Tenerife Sea”だった。エドからの「次の曲は静かに聴いて欲しい」との要望を受けて、まさに水を打ったように静まり返ったドームに、絹糸で繊細に織り込まれたかのような彼のファルセットが響き渡る。これほどまでに混じりっ気のない純度100%のエド・シーランの声を数万人が共有できたのは本当に稀有で、「ありがとう、世界一静かな空間だったよ!」と彼も嬉しそうだった。

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ループ・ペダルを駆使してリフ、ビート、コーラスを重ねていくダイナミックなナンバーと、ループ・ペダルの仕様はごく最低限、ほぼアコギ一本で歌いきるフォーキーなシンガロング・ナンバーが交互にセクションを成し、緩急をつけたショウの構成は昨年の武道館と同様だった。 “Don’t”から“New Man”、“Feeling Good”から“I See Fire”などのメドレーは、実に巧みなループ使いで曲が生き物のように姿を変えていくものだから、メドレーというよりも2曲をコンバインして生まれた全く新しい曲のように聞こえる。

また“Bloodstream”や“Photograph”のクワイアも白眉で、ドームの構造上の問題であるエコーやディレイまでもがコーラスのレイヤーに結果として奥行きを生み出していく。また、エドがジャスティン・ビーバーに提供した“Love Yourself”を歌い出すと、場内からは割れんばかりの大歓声が巻き起こった。

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ステージ上にひとりぼっちで立つエドの姿と、そこから放出される音の豊かさには改めて驚愕するしかない。彼にとってドームとは「この広さをひとりで埋めなくてはいけない」ハンデではなく、「広いからこそひとりで音をどこまでも響かせることができる」アドバンテージの場であるということなのだろう。その結果、“Thinking Out Loud”や“Perfect”、“Shape of You”のような音がスカスカな曲のほうが、むしろドームの空間を正しく使いきっているように感じられたのが驚きだった。

エドはこの後マレーシア、香港、韓国を周り、2週間後に大阪に戻ってくる。またもや歴史的瞬間が京セラドームに刻まれるのは必至。関西方面の皆さんは心してその時を待つべし!(粉川しの)

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<SET LIST>
Castle On The Hill
Eraser
The A Team
Don't / New Man
Dive
Bloodstream
Love Yourself
Tenerife Sea
Lego House / Kiss Me / Give Me Love
Galway Girl
Feeling Good / I See Fire
Thinking Out Loud
One / Photograph
Perfect
Nancy Mulligan
Sing
[encore]
Shape of You
You Need Me, I Don't Need You


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ギター1本の完全ソロ弾き語りで東京ドームを制した、エド・シーランの事件的ライブをついに観た! - 『rockin'on』2019年5月号『rockin'on』2019年5月号
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