ザ・ビートルズが愛用したあのスタジオで『アビイ・ロード』50周年記念盤を堪能! 「4人と同じ空間にいる気分で」5.1サラウンドになった歴史的傑作の響きを徹底レポ

ザ・ビートルズが愛用したあのスタジオで『アビイ・ロード』50周年記念盤を堪能! 「4人と同じ空間にいる気分で」5.1サラウンドになった歴史的傑作の響きを徹底レポ - pic by Mariko Sakamotopic by Mariko Sakamoto

「こうやって聴くのは皆さんが初めてです」――開口一番、挨拶に登場したジャイルズ・マーティンが語る。『アビイ・ロード』50周年記念エディションの目玉のひとつ「ドルビー・アトモス・ミックス」を、ザ・ビートルズが愛用したあのアビイ・ロード・スタジオの「スタジオ2」でどっぷり5.1 サラウンドでプレイバックする、という趣向の試聴会。筆者の隣席のドイツから昨日飛んできたという音響機器専門誌の記者をはじめ、世界各地からジャーナリストが集まった。

小さい体育館を思わせるスタジオ2の入り口近くには楽器コーナーが設けられている。ドラムス、ギター群、マイク、キーボード類の並ぶ粋な展示は「ビートルズと同じ空間にいる気分を」というジャイルズの意向を反映したものだが、さすがのベテラン記者たちも持参したアナログ盤を手に展示の前で記念写真にセルフィー、とはしゃいでいてなんとも微笑ましい。ビートルズは人々を子供に戻す魔法を備えている。しかしスタジオ後方に組まれた試聴エリアは座席エリアを左右と背後からコの字型に囲むリグと、頭上の両サイドにスピーカーを5基ずつ、座席正面にコラム・スピーカーとメインの大スピーカーが据わる。大小合わせて30台以上の「音の包囲網」状態だ。

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いよいよプレイバック開始。高品質スピーカーで聴く音質は当然サウンドの明度が高く美しい、さらに大音量でも耳に一切負担がかかならない(幸せ〜)。何よりパーカッション/ドラムの鮮明さに居住まいを正されるし、サラウンドの立体性と臨場感は“Come Together”や“I Want You (She's So Heavy) ”のようにインパクトの強い曲で映える! 演奏のニュアンスが細やかに味わえ、バンドの息の合い方も生き生き伝わってきて、ストリングス、シンセ、ハープシコード等の味付けもディテール豊か。やはり圧巻はラストのメドレー篇で、場面とムードが次々変わるスペクタクルな展開は、リールが巻き戻り“The End”に至るまで、さながら耳で体験する映画だった――と同時に、「終わり」の思いがしっかと刺さるのも事実だけれど。

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挨拶の際にジャイルズは、「3Dオーディオはジョークじゃありませんよ!」と述べてもいて、「古典」に手を加えることに対して予想される多少の反発をあらかじめ想定に入れざるを得ないのだな、と感じた。当事者である元メンバーおよび遺族からゴー・サインが出た上でのプロジェクトなので気にしなくてもいいとはいえ、筆者にしても主観的な試聴体験=長年の慣れがあるせいで、このプレイバックでの「『アビイ・ロード』の新たな響き方」に良い意味でどぎまぎさせられる瞬間はいくつかあった。

だが、それこそがポイントなのだ。旧友と久々に会い、彼/彼女の良さを改めて見直すと同時に、新たな面に気づかされるのは嬉しいもの。そんな風にビートルズの音楽にも尽きせぬ発見があるし、時代やテクノロジーの変化と共に少しずつ変化もしている。その意味で、いつの間にかノスタルジーに曇っていた自分の視界に新たな光をもたらしてくれたこのプレイバックは、素晴らしいカンフル剤だった。

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何より、まっさらな耳でこれから本作を聴く人々にとって、パンチの効いたドラマチックなサウンドで甦った4人のみずみずしさ――デジタル世代のためにビートルズをアップデートする、がこのプロジェクトの使命なのだから――は、間違いなく歓迎すべきものだろう。(坂本麻里子)

追記:にしても、ロッキング・オン取材のために昨年アビイ・ロードを訪問した際に比べ、受付もチェックが厳しく朝9時には警備員が数多く配置されていて物々しいのは妙だった。うっかりスタジオ内で迷うこともできないし(出口を探していたら、廊下の各所に立っていたセキュリティから「そこ、入らないで!」と即刻注意。トホホ)、誰かVIPが来るのかな……?と思っていたら、この晩、ポールとリンゴを迎えてリリース祝賀パーティが開かれたそうで。あのまま粘っていたら、ふたりを生で見れたかもと思うと、ちょっとだけ悔しい。

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ビートルズ『アビイ・ロード』の巻頭記事は現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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