声量・高音・艶のすべてが鳥肌もののリアム!47歳にして自信とプライドを取り戻した当代最高R&Rシンガーの「明るい俺様ライフ」

声量・高音・艶のすべてが鳥肌もののリアム!47歳にして自信とプライドを取り戻した当代最高R&Rシンガーの「明るい俺様ライフ」

去る9月21日に47歳の誕生日を迎えたリアム・ギャラガー。当日には「ハッピー・バースデー俺」と何とも彼らしいツイートもあって、ファンの祝福が殺到している。ニュー・アルバム『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』がリリースされた、翌日のことだった。


最近のリアムがすこぶるヘルシーで朗らか、近年稀に見るほど安定した状態にあることは、『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』の充実の内容にも明らかだ。『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』は全英チャートのミッドウィークで現在1位、最終的に『アズ・ユー・ワー』から2作連続での初登場1位を獲ることは間違いないだろう。同作の素晴らしさについては既にレビュー(https://rockinon.com/disc/detail/189437)でじっくり書いたのでそちらをお読みいただくとして、今回のテーマは47歳のリアム・ギャラガー、その人自身についてだ。


リアムの現在のグッド・コンディションを何よりビビッドに伝えるものが、彼の歌唱だ。リアムのボーカルは声量、高音、艶の全てにおいて過去20年で間違いなく今が最高だし、中でもこのMTVアンプラグドのパフォーマンスは観るたびに鳥肌が立ってしまう。


ちなみにオアシス時代唯一のMTVアンプラグド(1996)を、リアムは喉の不調で出演キャンセルしている。オアシスのアメリカ進出において極めて重要なチャンスだった同番組で自分の代わりにノエルが歌ったことは、彼にとって長らくトラウマだったはず。40代も半ばになった彼がこうして20代の若造だったかつての自分の失態を挽回できたことは、ほとんど奇跡にも思えるものだ。

そんなMTVアンプラグドを筆頭に、リアム・ギャラガーにとって過去を振り返り、落とし前を付けていくようなイベントが、最近続いている。8月はまさにイベント月間だった。まず何と言っても、オアシスの『ディフィニトリー・メイビー』の25周年という大きなアニバーサリーがあった。


その前週には、レディング・フェスティバルでヘッドライナーを務めたフー・ファイターズが、ステージでオアシス再結成の署名運動を呼びかけて話題になった。同じくレディングではトゥエンティ・ワン・パイロッツが“Don’t Look Back In Anger”の本気のカバーを披露し、リーズ会場ではなんとポスト・マローンまで飛び入り!というメモラブルな事態に。彼らは“Don’t Look Back In Anger”をカバーした理由について、「オアシスが解散してこの8月で10年だって気づいたから」だと語っている。


そう、TOPが言うように、2019年8月は『ディフィニトリー・メイビー』の25周年であり、オアシス解散から10年の節目の年&月でもあったのだ。『ディフィニトリー・メイビー』がリリースされたのは1994年8月29日。オアシスの解散は2009年8月28日だ。28日、29日と連続しているのにも何やら因縁を感じるが、そんなオアシス解散からジャスト10年の今年8月28日に、リアム・ギャラガーは新曲“One Of Us”のミュージック・ビデオを公開した。リアムは敢えて、10年前の「あの日」に合わせて公開したのではないか。MVの内容的にもそうとしか思えないのだ。


以前、児島由紀子さんがこちらのコラムで詳細に分析されていたように、“One of Us”のMVのテーマはずばり「兄弟の絆」だ。そこかしこに散りばめられたギャラガー兄弟の思い出と、その絆を断ち切っていなくなってしまったノエルへのリアムのナイーヴで率直な思慕の表現に、ギュッと胸が熱くなった人も多かったはず。

“One Of Us”はその歌詞も驚くほど素直で直球だ。「わかってるよ、不満なんだろ/いいからドアを開けな」、「永遠の命(live forever)を語っていたが、振り出しに戻って終わるだけだ/俺たちは同類と同類なんだから」と歌う同ナンバーは、身も蓋もなく要約するならば「兄貴、戻ってこいよ」という歌なのだ。


ちなみに“One Of Us”のミュージック・ビデオはイギリスの大人気ドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』のクリエイター・チームが制作したことでも大きな話題を呼んだ。『ピーキー・ブラインダーズ』は20世紀初頭の伝説的ギャングの兄弟を主人公としたドラマで、リアムももちろん大ファン。同ドラマのシェルビー兄弟とギャラガー兄弟を重ね合わせるようなツイートもしている。


『ピーキー・ブラインダーズ』の魅力のひとつが、暴力と謀略にまみれたギャングのハードボイルドな世界にあって、互いの命を預け合える唯一の存在として兄弟、家族の揺るぎない「血の絆」が熱く描かれていることだ。今のリアムがシェルビー兄弟に自分(たち)を投影したくなるのも納得なのだ(ちなみにキリアン・マーフィーが演じる主人公のトミー・シェルビーは頭脳明晰で切れ者の次男。つまりノエル?)

オアシス解散以降、リアムがどんなにノエルに悪態をつこうとも、そこには常に「未練」と呼ぶべき感情が渦巻いていた。その未練の裏で絡まり合った後悔と強がりは、彼の未来をさらに複雑で困難なものにしていた。そして今、リアムは改めてノエルに「戻ってこい」とメッセージを送っている。しかし、驚くほど素直でナイーヴなそのメッセージには、かつての未練とはかけ離れたリアムの想いを感じさせるものだ。

もちろん、今でもインタビューでノエルのノの字が出たらディスらずにいられない性質のリアムだが、コンプレックスや弱さの裏返しで牙を向いていたかつてのそれとはだいぶニュアンスが変わってきている。元オアシスのメンバーとして以前に、血を分けた兄弟としての当たり前の情愛が、今のリアムの歌から、歌詞から、言葉からは滲み出しているのだ。

ちなみに兄弟の情愛、家族の絆は『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』の大きなテーマのひとつだ。前述の“One Of Us”はもちろんのこと、《本気じゃないよな/それでも別れるなんて》、《言ってほしい、火花はまだ残っていると》、《今こそお前には親友が必要》と歌う “Glimmer”も、ノエルに向けたメッセージとも読み取れる。そのほかにも《進み続けろ、倒れてもまた立ち上がれ》と母に鼓舞される“Be Still”や、《やっとお前を見つけたんだ、もうどこにも行かないでくれ》と娘のモリーに語りかける“Now That I’ve Found You”と、リアムはロックンロール・シンガーとしての自信とプライドを取り戻した本作の中で、立ち止まり、振り返り、最も身近で大切なものを再確認しているのだ。


そして、そんな地に足のついた今のリアム・ギャラガーだからこそ、『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』の聴くものを大らかに包み込むような暖かなヒューマニックな響きは生まれたのだと思う。リアムは昔から血縁やブラザーフッド、ソリダリティを大切にしてきた人で、それはバーミンガムの貧民窟から兄弟の絆の力でのし上がっていった『ピーキー・ブラインダーズ』のシェルビー兄弟のように、英ワーキング・クラスの古き良き美徳でもある。すこぶるヘルシーで朗らか、近年稀に見るほど安定した状態にあるリアム・ギャラガー、47歳。ロックンロールを愛し、(ノエルを含む)兄弟を愛し、愛しいものに囲まれた人生を謳歌している現在の彼は、破天荒のカリスマ、リアムの本質的な姿なのかもしれない。(粉川しの)



リアム・ギャラガーのインタビュー記事は現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

声量・高音・艶のすべてが鳥肌もののリアム!47歳にして自信とプライドを取り戻した当代最高R&Rシンガーの「明るい俺様ライフ」 - 『rockin'on』2019年10月号『rockin'on』2019年10月号
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