現体制になって3枚目のフルアルバムである本作は、山内総一郎とフジファブリックというバンドにとって、私小説のような作品になった。《風に揺れた君の髪の匂い》(“LIFE”)や《新しい服は嬉しいんだと自転車でピース》(“Gum”)といった、何気ない風景をなぞった歌詞。バンドが10年間培った音楽性をすべて詰め込んだような多彩な楽曲。通して聴くと、思い出を振り返っているような感覚すらある。でもこれはただの私小説ではなく、いわばフジファブリックというバンドの集大成だ。「LIFE」、つまり人生とか生活とかいうものは、大きなイベントによってではなく、ありふれた一瞬一瞬の積み重ねによって形作られていく。フジファブリックもそうやって、いくつもの層を重ねてここまできた。『LIFE』は今までになく静かな作品だが、その中には誰が歌おうとフジファブリックはフジファブリックなのだと思える強さがある。作り手や体制が変わっても、この10年は地続きだ。その上に立つことが「今」なのだ。本作を通して彼らは、その層こそが自分たちの「核」をなすということに気付いたのだと思う。(安田季那子)