ロックヒーローのヒーロー論

吉川晃司『Dream On』
2014年09月03日発売
SINGLE
吉川晃司 Dream On
吉川はこの曲が書けないと、取材で会った時に言っていた。いわくこの曲が主題歌になる映画の主人公の機微を掬い取り違っていると。そして完成した本楽曲だが、これはどう聴いても吉川晃司じゃないか。歌われているヒーロー像、その機微が完全に吉川晃司その人のそれなのである。例えば、「人は見果てない夢に賭け続け倒れ続ける/流行らない愚直さが美しい」だ。吉川は主人公の機微がわからなかったから書けなかったのではなく、むしろ自分自身に向き合う作業だったからこそ書けなかったんじゃないか。

その意味でこれは、デビュー30周年を迎えた吉川晃司による、あらためての吉川晃司論として聴くべきロックンロールナンバーである。とにかく潔い。なにしろ、イントロから吉川がメロディを歌いきるまでに3分かからない。サビのリフレインもない。その分アウトロはたっぷり1分以上あるが、吉川の登場時間はきっかり3分だ。そして、言いたいことは言ったぜとばかりに颯爽と去っていく。そういえば、映画のタイトルは『イン・ザ・ヒーロー』。ロックヒーローには3分あれば十分なのです。はい。(小栁大輔)
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