EDMとクラシックの質感がミステリアスに絡み合いながら濃密な情景を描き出す“日本海”。爆走シャッフル・ビートが奏でる“しゃぼんがぼんぼん”のプログレ祭囃子的な狂騒感。ハイブリッド・カリプソ的なクールな切れ味と浮遊感に満ちた“Amamoyo”……すでに各地夏フェスなどで披露されて無数の「?」と「!」を巻き起こしている“Liberty&Gravity”がオーセンティックな楽曲に思えてくるぐらいに、アイデアとチャレンジ精神があふれ返る全14曲。「もしポップ・ミュージックが西欧&アメリカ主流の表現でなかったとしたら」というパラレル・ワールド的な発想を自由闊達に、かつ明確な信念を持って焼きつけた今作――音楽の歴史を丸ごと書き換えるような意欲に満ちあふれたその楽曲群は、どこまでも多国籍的な薫りを帯びているのと同時に、どこまでも日本のアーティストとしてのアイデンティティに貫かれたものだ。そして、何より最高なのは、それらの多彩な音のパーツとの乱反射によって、丹念に磨き上げられたポップの至宝=岸田のメロディがこの上なく鮮烈に浮かび上がってくることだ。最高。(高橋智樹)