この声が時代を掴んだ理由

サム・スミス『イン・ザ・ロンリー・アワー』
発売中
ALBUM
サム・スミス イン・ザ・ロンリー・アワー
半年以上遅れてようやく日本盤リリースとなった本作は、世界で400万枚以上を売り上げ、グラミーはじめ各国各音楽賞に軒並みノミネートされる等、2014年最大のブレイクを記録したシンガー、サム・スミスのデビュー・アルバムである。“ステイ・ウィズ・ミー”で決定づけられたスミスのイメージは、エイミー・ワインハウスやアデルといったUKディーヴァの男性版であり、ブルー・アイド・ソウルなんて単語を久々に引っ張り出したくなってくるような、正当派ソウルの継承者というもので、本作の基調となっているのもクラシカルなそれだ。ただしその一方で、本作の1曲目“マネー・オン・マイ・マインド”は彼がダブステップやエレクトロを通過した「ポスト・ジェイムス・ブレイク」な才能でもあることを示しているし、そもそも最初に脚光を浴びたのがディスクロージャーの“ラッチ”であり、ノーティ・ボーイの“ラ・ラ・ラ”だったことも含めて、彼が単なる復古主義者でないことは明らかだ。ソウル・ミュージックがエレクトロの人気素材として様々に解釈・コラージュされている昨今、再びベーシックなソウルを再構築しようとしたのがまさにそんなコラージュ時代のハイブリッドな才能であるスミスだった、というのが本作の面白さなのだ。「ある男性との恋愛経験」を元にした作品だという本作は、彼のセクシャリティを超えて普遍的な「喪失」についての連作となっている。初めて聴くという方はメアリー・J.ブライジ参加の“ステイ・ウィズ・ミー”他、ボートラ充実の日本盤をぜひ。(粉川しの)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on